「資格取得支援あり」「資格の取得費用は会社が負担」。未経験から現場の仕事を始める人にとって、気になる言葉です。一方で、「辞めるときに費用を返せと言われないか」が心配な人もいると思います。
答えはこうです。支援の範囲は会社ごとに違います。確認するのは、①どの資格や講習が対象か、②どの費用を誰が払うか(受講料・受験料・交通費・受講日の給料)、③辞めたときに返す決まりがあるか、の3点です。
③については、会社の指示で取った資格の費用を「一定期間内に辞めたら返す」と決めることは、労働基準法16条(違約金や損害賠償額をあらかじめ決めることの禁止)に反する可能性があります。ただし、本当の貸付として契約し、一定期間働けば返済を免除する形なら、違反にならない場合もあります。「返さなくていい」とも「返すべき」とも一律には言えないため、条件は書面で確認してください。
法律で会社が行う教育と、会社の制度で取る資格は別もの
資格取得支援を確かめる前に、2つを分けてください。
① 法律で会社が行うことになっている教育(特別教育など)
危険な業務に就かせるとき、事業者は特別教育を行わなければなりません(労働安全衛生法59条)。たとえば、フルハーネス型墜落制止用器具を使う作業や、足場の組立て等の作業の特別教育です。
特別教育を受けている時間は労働時間です。所定労働時間内に行うのが原則で、法定労働時間を超えて行えば割増賃金が必要です。会社の外の講習を受ける場合の受講料や旅費も、事業者が負担するものとされています。これは会社の「支援制度」ではなく、法律にもとづく会社の義務です。
② 資格のある人しか就けない業務の資格(技能講習・免許・国家資格など)
種類 | 例 | 費用の扱い | 確認すること |
|---|---|---|---|
技能講習 | 玉掛け、フォークリフト、小型移動式クレーン | 資格のある人しか就けない業務のための資格(労働安全衛生法61条)。会社の指示で受けるのか、仕事に必要か、会社の規程でどう定めているかによって扱いが変わる | 受講料、受講日の給料、返還の条件 |
免許・国家資格 | 移動式クレーン運転士、電気工事士、施工管理技士 | 同上 | 受験料、不合格のときの再受験、資格手当 |
技能検定 | 型枠施工、鉄筋施工などの技能士 | 同上 | 受検料の負担 |
「資格取得支援あり」と書かれているのは、主に②についての会社の制度です。ただし、②の費用は「すべて本人の任意だから自己負担」とも「すべて会社負担」とも言い切れません。会社の指示で、その仕事に必要な資格を取る場合なのかどうかを確認してください。
特別教育の時間の扱いは「新規入場者教育とは?」でも説明しています。

※画像はイメージです。
費用の内訳:どこまでが「会社負担」か
費用 | 支援の形の例 | 確認する質問 |
|---|---|---|
受講料・受験料 | 会社が直接払う/立て替えたあとに精算する | 立替の場合、精算はいつか |
テキスト・教材 | 会社が用意する/自分で買う | 支援の対象に入るか |
交通費・宿泊費 | 講習会場が遠い場合に発生する | 支給されるか、上限はあるか |
受講日の給料 | 出勤扱い/休日に受講して無給 | 受講日は勤務になるか |
不合格のときの再受験 | 1回目だけ会社負担など | 再受験の費用は誰が持つか |
資格手当 | 合格後に毎月支給 | 金額と、支給が始まる時期 |
作業着や安全靴などの負担の考え方は「作業着・安全靴は自腹?」でも整理しています。
入社時の健康診断の費用は、資格取得支援とは別の決まりで扱われます。こちらは「入社時の健康診断の費用と確認事項」で確認できます。

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辞めたときの返還:判断で見られる点
福島県労働委員会のQ&Aでは、裁判で考慮される点として次の3つを挙げています。
業務性:受講が本人の自由意思か。仕事との関係があるか。会社が出した費用が立替金と言えるか
返済免除の基準の合理性:基準が明確か。免除までの勤務期間が長すぎないか
返還額の相当性:実際にかかった費用の範囲内か。勤めた期間に応じて減額されるか
厚生労働省の「スタートアップ労働条件」も、業務命令によるものか、事業に必要な経費ではないか、貸し借りの契約になっているか、返済方法が決まっているかなどを総合的に見て判断する、と説明しています。
なお、①の特別教育は会社が法律にもとづいて行うものです。その費用が返還の対象に含まれている場合は、書面の該当箇所を確認し、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談してください。
実際に返還を求められたら、まず根拠となる書面(就業規則、誓約書、貸付の契約書)のコピーをもらってください。給料や退職金から一方的に差し引かれた場合は、賃金の全額払いの原則(労働基準法24条)との関係で問題になります。都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。
求人票の「資格取得支援」の読み方
「資格取得支援あり」という説明だけで全費用が会社負担とは判断しないでください。対象資格、受講料・受験料・交通費、受講日の賃金、退職時の返還条件を規程や書面で確認します。
面接・内定のときに聞くこと
入社後に取る資格や講習と、その時期
受講料・受験料・交通費は誰が払うか。立替ならいつ精算されるか
受講した日は出勤扱いになるか
不合格だった場合、再受験の費用はどうなるか
退職時に費用を返す決まりはあるか。あれば書面を見せてもらえるか
資格手当はあるか

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自分で費用を出して資格を取る場合
雇用保険の加入期間などの条件を満たしていれば、国が指定した講座の受講費の一部が「教育訓練給付金」として支給される制度があります。受けたい講座が対象になっているか、自分が条件を満たしているかは、受講する前にハローワークで確認してください。
よくある質問
Q. 修了証や免許証は、会社に預けるのですか。
原本を誰が保管するかは、資格や会社の決まりによって違います。会社が原本を預かる場合は、どんなときに返してもらえるのか、退職するときに返却されるのかを確認してください。
Q. 資格がなくても応募できますか。
入社後に資格を取る場合は、取得までに担当する作業、指導する相手、講習の時期を確認してください。
「支援あり」の中身を、応募前に書面で見る
資格取得支援は、資格を取る費用や時間の負担を軽くできる制度です。ただし、その中身は会社ごとに違います。まず、法律で会社が行う特別教育と、会社の制度で支援する資格を分けて考えてください。
そのうえで、対象、費用、受講日の扱い、返還の条件の4つを書面で確かめてから応募すれば、辞めるときに何を確認すればよいかも分かります。取りたい資格が見えている人は、その資格を入社後に取れる求人から探してみてください。
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