アスベスト除去の求人を見つけたものの、「防護服を着て何をするのか」「未経験でもできるのか」が分からず、迷っていませんか。
アスベスト除去は、建物を壊しながらアスベストを探す仕事ではありません。工事の前に専門の調査で石綿の有無や場所を確認し、その結果に沿って、法令で決められた飛散・ばく露防止措置を取りながら建材を取り除く仕事です。
この記事では、次のことを整理します。
アスベスト除去の仕事内容
事前調査と除去作業の違い
作業の流れ
特別教育と石綿作業主任者の違い
使用する保護具
未経験で応募する前に確認すること
住み込みで働く場合の確認点
アスベスト除去とはどんな仕事?
アスベスト(石綿)は、かつて建材に使われていた繊維状の鉱物です。建物の解体や改修では、石綿を含む建材が残っていることがあります。
アスベスト除去の仕事は、この石綿を含む建材などを、法令で定められた飛散・ばく露防止措置を取りながら取り除く作業です。「アスベスト除去工」は、法律で独立した国家資格として定められた職種名ではありません。求人では、解体工事会社や専門工事会社が募集しています。
担当する範囲は会社によって異なります。
養生や隔離の設置
石綿含有建材の除去
除去した建材の梱包・搬出
作業区域の清掃
解体工事のほかの作業
求人票では、仕事内容の欄でどこまでを担当するのかを確認してください。
アスベスト除去と事前調査は別の仕事
アスベスト除去の現場では、作業に入る前に次の流れがあります。
事前調査
解体・改修工事の前に、作業に関わる部分のすべての材料について、石綿が含まれているかを調べる
結果の記録・掲示
調査結果を記録し、作業場所に備え付けて、概要を働く人の見やすい場所に掲示する
計画・届出
石綿の有無と建材の種類に応じて、必要な作業計画を立て、対象となる工事では労働基準監督署へ届け出る
除去作業
計画と安全対策に沿って、石綿含有建材を除去する
事前調査は、対象となる建築物・工作物・船舶に応じて、一定の要件を満たす者が行う必要があります。建築物と船舶(鋼製)は2023年10月から、工作物は2026年1月から対象です。事前調査では、設計図書等の文書による確認と目視による確認を行います。ただし、文書が存在しない場合や、構造上目視で確認することが困難な材料などには例外があります。
つまり、現場の作業員が建材を見て、自分の判断で石綿の有無を決めるわけではありません。作業者は、掲示された事前調査の結果を確認したうえで、決められた方法で作業します。
アスベスト除去作業の主な流れ
作業の方法は、石綿を含む建材の種類や工法によって変わります。そのため、どの現場でも同じ手順になるわけではありません。おおまかな流れは次のとおりです。
作業内容と事前調査結果の確認:どの部分に石綿があるか、どの方法で除去するかを確認する
作業区域の準備:掲示を行い、関係者以外が立ち入らないよう管理する
必要に応じた隔離・養生:建材の種類に応じて、作業場所を隔離する
保護具の確認・着用:呼吸用保護具や保護衣などを、決められた方法で着用する
湿潤化などの飛散防止:建材を湿らせるなどして、粉じんが飛び散らないようにする
石綿含有建材の除去:計画された方法で建材を取り除く
除去した材料の梱包・処理:飛散しないように梱包し、決められた方法で処理する
作業区域の清掃
取り残しの確認と隔離の解除:対象となる作業では、隔離を解く前に資格者が目視で取り残しがないことを確認する
記録:作業の状況などを記録し、保存する
作業区域では、関係者以外の立入りのほか、飲食や喫煙も禁止されます。
特別教育と石綿作業主任者の違い
アスベスト除去の現場では、「特別教育」と「石綿作業主任者」という2つの言葉が出てきます。役割が違うため、混同しないようにしてください。
特別教育 | 石綿作業主任者 | |
|---|---|---|
対象 | 石綿が使用されている建築物・工作物・船舶の解体等の作業に従事する労働者 | 事業者が石綿作業主任者技能講習を修了した者のうちから選任する人 |
内容 | 石綿の有害性、粉じんの発散を抑える措置、保護具の使用方法などの教育 | 作業方法の決定、労働者の指揮、装置の点検、保護具の使用状況の監視など |
位置づけ | 作業に就く前に、事業者が行わなければならない教育 | 現場に選任され、作業を指揮する立場 |
石綿等が使用されている建築物などの解体等の作業に労働者を就かせるとき、事業者はその労働者に特別教育を行わなければなりません。作業者全員が石綿作業主任者の資格を持つ必要はありません。
また、特別教育を受けることと、石綿作業主任者になることは別です。特別教育を修了しても、それだけで作業主任者に選任されるわけではありません。
アスベスト除去ではどんな保護具を使う?
石綿等の切断などの作業では、呼吸用保護具と保護衣等を使用します。呼吸用保護具には、電動ファン付き呼吸用保護具や防じんマスクなどがあります。
どの保護具を使うかは、作業の内容と場所によって変わります。
隔離した空間の内部で切断などを行う場合
隔離空間の外部で作業する場合
切断を伴わない囲い込みや成形板の除去を行う場合
それぞれで、求められる呼吸用保護具の種類や性能が異なります。保護衣も、フード付きの保護衣が必要な場合と、保護衣または作業衣でよい場合があります。
市販のマスクを着ければよい、という仕事ではありません。どの保護具を、どの場面で、どう着脱するかは、特別教育の内容にも含まれます。応募前には、会社が支給する保護具と、着脱の手順をどう教えているかを確認してください。

健康管理の仕組み
石綿等の取扱いに常時従事する作業者は、雇入れ時または配置換えの際と、その後6か月以内ごとに1回、医師による石綿健康診断を受ける必要があります。検査には、業務の経歴の調査、せき・たん・息切れ・胸痛などの症状の有無の検査、胸部エックス線撮影があります。
また、労働者ごとに、石綿の取扱い作業に従事した期間、作業の内容、保護具の使用状況などを記録し、40年間保存することになっています。転職した後にも関わる記録なので、健康診断と記録がどのように行われているかは、応募前に確認しておきたい点です。
未経験でもアスベスト除去の仕事に応募できる?
入職の段階で国家資格が必ず求められるとは限りません。ただし、採用されることと、その日から石綿の除去作業に従事できることは別です。
石綿が使用されている建築物などの解体等の作業に就く前には、事業者が行う特別教育が必要です。そのため、未経験で応募する場合は、次の点を確認してください。
最初に担当する作業は何か
特別教育をいつ受けるのか
会社が受講を手配するのか
受講費用は誰が負担するのか
現場に石綿作業主任者がどのように配置されるのか
呼吸用保護具や保護衣などの安全装備は支給されるのか
未経験者に誰がどのように現場で指導するのか
「未経験歓迎」と書かれていても、入社後の教育の進め方は会社によって違います。求人票で分からない部分は、面接で確認してください。
アスベスト除去と解体作業員の違い
解体作業員は、建物や構造物の解体作業を広く担当します。アスベスト除去は、石綿を含む建材について、法令上必要な飛散・ばく露防止措置のもとで除去などを行う作業です。
実際には、解体工事会社がアスベスト除去まで担当することもあり、完全に別の会社・別の職種とは限りません。求人票では、解体作業とアスベスト除去のどちらが中心か、両方を担当するのかを確認してください。
解体の仕事そのものについては、「解体工の仕事内容」の記事で解説しています。
働く前に確認したい安全管理
アスベスト除去の現場では、法令に沿ったばく露防止措置が前提になります。応募前に、次のような仕組みが整っているかを確認しておくと判断しやすくなります。
事前調査の結果が現場に掲示されているか
特別教育をいつ、どのように実施しているか
石綿作業主任者が選任されているか
呼吸用保護具・保護衣が支給され、着脱の方法を教えているか
建材や工法に応じた隔離・湿潤化などの措置が取られているか
作業区域への立入管理が行われているか
作業後の清掃と記録が行われているか
石綿健康診断を定期的に受けられるか
安全対策を取れば健康への影響がまったくなくなる、と言い切れるものではありません。逆に、法令上の措置を守って作業する仕事を、危険なだけの仕事と決めつける必要もありません。どのような措置が取られているかを具体的に確認することが、判断材料になります。
住み込みでアスベスト除去の仕事をするときに確認すること
住み込みで働く場合は、仕事内容に加えて、次の点を確認しておくと生活の見通しが立ちやすくなります。
寮から現場への移動
集合場所が寮なのか、会社の事務所なのか。
現場まで送迎車か、社用車か。
移動の考え方は「寮から現場までどう通う?」の記事で整理しています。
現場エリアと遠方の現場
どの範囲の現場に行くのか。
遠方の現場になった場合に、寮を移るのか、同じ寮から通うのか。
作業着・保護具の扱い
作業着や保護具のうち、会社が支給するもの。
作業後の着替えの場所と、作業衣・保護衣の取り扱いに関する会社のルール。自己流で持ち帰ったり洗ったりせず、会社の安全管理の方法に従ってください。
教育・健康診断
特別教育の費用負担。
石綿健康診断をどのように受けるか。
初回給料日までのお金
赴任交通費が支給か立替か。
給与の前払い制度があるか。
寮費・食費が毎月いくら差し引かれるか。
詳しくは赴任交通費、給与前払いの各記事を確認してください。
求人票で確認するポイント
確認項目 | 確認の意味 |
|---|---|
具体的な仕事内容 | 除去作業が中心か、解体作業も含むか |
扱う建材・工事 | どのような建物・工事を担当するか |
未経験者の担当業務 | 最初に任される作業 |
特別教育の実施 | いつ、どこで受けるのか |
教育費用の負担 | 会社負担か、自己負担か |
石綿作業主任者の配置 | 現場にどのように配置されるか |
保護具の支給 | 呼吸用保護具・保護衣の支給範囲 |
安全教育・健康診断 | 入社後の教育内容と健康診断の受け方 |
始業・終業時刻 | 集合時刻と1日の流れ |
集合場所 | 寮・事務所・現場のどこに集まるか |
現場エリア | 通える範囲か、遠方の現場があるか |
現場への移動 | 送迎・社用車・その他 |
現場変更時の寮 | 寮の移動や費用の扱い |
給与から控除される費用 | 寮費・食費・装備代などの有無 |
面接で聞いておきたい質問
「未経験の場合、最初はどの作業を担当しますか」
「石綿作業の特別教育は、入社後に会社で受けられますか。費用は会社負担ですか」
「現場では石綿作業主任者がどのように配置されていますか」
「呼吸用保護具や保護衣などは会社から支給されますか」
「作業後の着替えや装備の管理は、どのような手順で行いますか」
「石綿健康診断はどのように受けられますか」
「集合場所と集合時刻、現場までの移動方法を教えてください」
「遠方の現場になった場合、寮はどうなりますか」
寮条件の質問をまとめて確認したい場合は、「住み込み求人の面接で寮について何を聞く?質問チェックリスト14項目」も使えます。
判断するときのポイント
判断の中心は、担当する作業と、会社の安全管理の進め方を具体的に確認できるかです。次の3点を並べて確認してください。
担当する作業
除去作業が中心か、解体作業も含むか。
未経験から最初に任される作業。
教育と安全管理
特別教育をいつ受けるか、費用は誰が負担するか。
石綿作業主任者の配置、保護具の支給、健康診断。
住み込み生活との両立
集合時刻、現場への移動、遠方の現場になったときの住まい。
作業着・保護具の取り扱いルール。
Q. アスベスト除去の仕事は資格がないとできませんか?
入職の段階で国家資格が必ず求められるとは限りません。ただし、石綿が使用されている建築物などの解体等の作業に就く前には、事業者が行う特別教育が必要です。応募前に、教育の受け方を会社に確認してください。
Q. 特別教育と石綿作業主任者は同じですか?
別のものです。特別教育は、作業に従事する労働者に対して事業者が行う教育です。石綿作業主任者は、事業者が石綿作業主任者技能講習を修了した者のうちから選任し、作業方法の決定や指揮、保護具の使用状況の監視などを担う立場です。
Q. アスベスト除去ではどんなマスクを使いますか?
作業の内容と場所によって異なります。切断などの作業では、電動ファン付き呼吸用保護具や防じんマスクなどを使用し、隔離空間の内部と外部でも必要な種類が変わります。会社が支給する保護具と、その着脱方法を確認してください。
Q. 事前調査も除去作業員が行いますか?
事前調査は、対象となる建築物・工作物・船舶に応じて、一定の要件を満たす者が行う必要があります。作業者は、掲示された事前調査の結果を確認したうえで、決められた方法で作業します。
Q. アスベスト除去と解体作業は同じですか?
同じではありません。解体作業は建物や構造物の解体を広く担当し、アスベスト除去は石綿含有建材について法令上の措置のもとで除去などを行います。両方を担当する会社もあるため、求人ごとに確認が必要です。
まとめ
最初にやることは、アスベスト除去という仕事のイメージで応募を決めることではありません。その求人で担当する作業と、会社の安全管理の進め方を確認することです。
それが分かれば、次のことを判断できます。
除去作業が中心か、解体作業も含むのか
未経験から、いつ特別教育を受け、どの作業を担当するのか
現場で誰が作業を指揮し、どの保護具が支給されるのか
集合場所や現場の移動が、寮での生活と合うか
これが曖昧なまま入社すると、想定と違う作業や進め方に戸惑い、続けるかどうかの判断がしにくくなります。
判断の軸は、作業の内容と安全管理の中身を、会社が具体的に説明してくれるかどうかです。説明が具体的であるほど、働き始めてからの見通しも立てやすくなります。
今日できるのは、気になる求人票から「仕事内容」「特別教育の記載」「集合場所」の3つを書き出すことです。書かれていない項目は、そのまま面接で聞く質問にしておきましょう。
仕組みが分かれば、求人票の読み方が変わり、自分に合う現場を落ち着いて選べるようになります。

