求人で「はつり工」「斫り」という言葉を見て、読み方や意味が分からなかった人もいるかもしれません。解体の仕事と同じなのか、違うのかで迷う人もいるでしょう。
はつり工は、コンクリートなどの表面を削る、床や壁に穴を開ける、コンクリートを部分的に壊すといった作業を担う仕事です。建物をまるごと取り壊す解体工事とは、作業の目的と範囲が異なります。この記事では、作業の流れ、使う工具、解体工との違い、粉じん・騒音・振動への安全対策、関係する教育、応募前に確認したい点を整理します。
「はつり」とは
「はつり(斫り)」は、コンクリートやれんがなどを削ったり、壊したりして、形を整える作業を指します。厚生労働省の資料では、はつり工は、コンクリート・れんが等の表面のはつり取り、床・壁の穴あけ、コンクリート壊しなどに従事する職種として整理されています。
はつりの作業は、改修工事や設備工事、新築工事の途中などで必要になります。例えば次のような場面です。
配管や配線を通すために、床や壁に穴を開ける
設計と違う形になった部分や、余分なコンクリートを取り除く
新しいコンクリートやモルタルがなじむよう、表面を粗くする
改修のために、一部の床や壁を撤去する
はつり工の仕事内容・作業の流れ
例として次のような工程があります。実際の順序や役割分担は、会社や現場によって異なります。
事前確認:はつる範囲と深さを図面や現場の指示で確認します。壁や床の中に配管や配線が通っていないかも確認します。
養生:周囲の床や壁、設備を傷つけたり汚したりしないよう、シートなどで覆います。
範囲の印付け:はつる位置を線で示します。
はつり:電動ハンマー、ハンドブレーカー、カッターなどを使って、削る・壊す・切断する作業を行います。穴あけではコアドリルを使う場合もありますが、どこまでをはつり工が担当するかは会社や現場によって異なります。

ガラの処理:はつりで出たコンクリートのかけら(ガラ)を袋に詰め、搬出します。
清掃・確認:粉じんを片付け、指示どおりの形や寸法になっているかを確認します。

解体工との違い
職種 | 主な仕事 | 作業の目的 |
|---|---|---|
はつり工(本記事) | コンクリート等を削る、穴を開ける、部分的に壊す・形を整える | 建物を使い続けたり、工事を進めたりするための部分的な加工 |
解体工 | 建築物・工作物の取壊し、撤去、分別など | 建物や工作物を取り除く |
解体工事でも手作業のはつりを行うことがあり、はつり工が小型の機械を使うこともあります。「重機か手作業か」ではなく、建物のどの部分を、何のために壊すのかで考えると区別しやすくなります。建物を取り壊す仕事については「解体工の仕事内容」で詳しく扱っています。
未経験者が最初に担当する仕事
未経験の場合は、次のような作業から始める例があります。
養生シートの設置と撤去
ガラの袋詰め、運搬

粉じんを抑えるための散水の補助
清掃、道具の準備と片付け
小型の工具を使った作業の補助
どの段階で電動工具やブレーカーを任されるかは会社によって異なります。面接で確認しておきましょう。
資格・教育
はつり工として入職するために、全員があらかじめ取得しなければならない1つの資格があるわけではありません。ただし、求人ごとに応募条件は異なり、担当する作業によっては法令で定められた教育の受講や資格が必要になります。
区分 | 内容 |
|---|---|
研削といし | 取替え、または取替え時の試運転の業務が特別教育の対象です。グラインダー等の工具を使うこと自体は対象ではありません |
車両系建設機械(解体用)の運転 | 機体重量3t以上のものを運転する業務は技能講習、3t未満のものを運転する業務は特別教育が必要です。公道を走行するための自動車運転免許とは別の制度です |
職長教育 | 新たに職長等の職務に就く人に対して、事業者が行う教育です |
改修工事では、はつりを始める前に、既存の建材に石綿(アスベスト)が含まれていないかを確認することがあります。解体・改修工事では、事業者が工事前に石綿の有無を調査することが定められています(石綿則3条)。石綿を含む建材の除去は専門の作業として扱われ、はつり工の仕事と同じではありません。除去作業については「アスベスト除去の仕事内容」でまとめています。
安全面で知っておきたいこと
はつりは、コンクリートを削る・壊す作業のため、粉じん・騒音・振動への対策が欠かせません。
粉じん:削ったときにコンクリートの粉じんが出ます。散水、集じん機、防じんマスクなど、会社がどの対策をとっているかを確認しましょう。
騒音:ブレーカーなどの音は大きく、耳栓やイヤーマフを使う場合があります。厚生労働省は騒音障害を防止するためのガイドラインを示しています。
振動:振動する工具を長く使い続けると、手や腕に負担がかかります。厚生労働省は振動工具の取扱いに関する指針を示しており、使用時間の管理などの考え方があります。
飛散物:かけらが飛ぶため、保護メガネや保護面を使います。
埋設物:壁や床の中の電線や配管を傷つけると、感電や漏水につながるおそれがあるため、事前確認が大切です。
暑さ:法令上「熱中症を生ずるおそれのある作業」に該当する場合、事業者は症状を報告する体制を整え、作業からの離脱・身体の冷却・必要に応じた医師の診察等の手順を定めて周知します。
保護具が支給されるか、自分で用意するかも確認しておきましょう。

住み込みで確認すること
寮から現場までの移動手段と、移動時間の扱い
現場が変わる頻度(1日で終わる現場か、数週間通う現場か)
夜間や休日の作業の有無(店舗や稼働中の建物の改修では、営業時間外に作業する場合があります)
粉じんで汚れた作業服を洗う場所
休工日の賃金の扱い(給与形態や就業規則・賃金規定等によって異なります)
求人票で確認するポイント
項目 | 見るところ | 確認したい理由 |
|---|---|---|
仕事内容 | はつり専門か、解体工事も含むか | 担当する作業の範囲が変わるため |
現場の種類 | 新築、改修、設備工事など | 作業時間帯や1現場の期間に関わるため |
使う機械 | 手持ち工具中心か、小型の解体機械も使うか | 必要な教育が変わるため |
保護具 | 防じんマスク、耳栓、保護メガネの支給 | 健康面の対策と初期費用に関わるため |
作業時間帯 | 夜間作業の有無 | 生活リズムに関わるため |
契約形態 | 雇用契約か、請負・業務委託か | 保険や給与の扱いが変わるため |
面接で聞いておきたい質問
「はつりの仕事が中心ですか。解体工事も担当しますか。」
「未経験の場合、ブレーカーなどの工具はいつ頃から使いますか。」
「粉じんや騒音に対して、どのような保護具や対策を用意していますか。」
「夜間に作業する現場はありますか。」
「寮から現場まではどのように移動しますか。」
判断するときのポイント
はつり工の求人では、仕事の範囲と安全対策の具体性を比べましょう。はつり専門の会社と、解体工事と合わせて行う会社では、日々の作業が違います。また、粉じん・騒音・振動への対策を具体的に説明してもらえるかは、長く働けるかを考えるうえでの手がかりになります。
よくある質問
Q. はつり工と解体工は同じ仕事ですか。
どちらもコンクリートなどを壊す作業がありますが、はつり工は削る・穴を開ける・部分的に壊す作業、解体工は建物や工作物を取り壊す工事が中心です。会社によっては両方を担当する場合があります。
Q. 体力に自信がなくても続けられますか。
重い工具やガラを扱う作業があります。最初に担当する作業の内容や、機械で運ぶ場面があるかは会社によって異なるため、面接で聞いてみてください。
Q. 石綿を扱うことはありますか。
改修工事では、工事前に石綿の有無が調査されます。石綿を含む建材の除去は専門の作業として扱われます。はつりの現場で石綿を含む建材に関わる可能性があるかは、会社に確認してください。
まとめ
応募前に確認したいのは、次の3点です。
はつり専門か、解体工事も含むか
粉じん・騒音・振動への対策と保護具の支給
現場の種類と作業時間帯(夜間作業の有無)
この3点が分かれば、日々の作業内容だけでなく、体への負担や生活のリズムまで含めて求人を比べやすくなります。
仕事の範囲や安全対策が曖昧なまま入ると、想定していなかった作業や時間帯に戸惑うことがあります。
判断の軸は、安全対策を具体的に説明してもらえるかです。保護具や作業の手順を具体的に答えてもらえるかどうかで、現場の様子を思い描きやすくなります。
今日できるのは、気になる求人票に「保護具支給」「夜間あり」といった記載があるかを確認することです。
コンクリートを削って形を整える仕事は、これからの働き方を整えていく一歩にもなります。

