建設現場の求人で「耐火被覆」という言葉を見ても、何を覆い、なぜ必要なのか分かりにくいかもしれません。耐火被覆工は、鉄骨造の建物の柱や梁などを耐火材料で覆い、火災のときに建物に求められる耐火性能を確保するための施工を行う仕事です。断熱のための保温工事とは目的が異なります。この記事では、主な工法、作業の流れ、似た仕事との違い、資格や安全面、住み込みで働く場合の確認点を整理します。
耐火被覆とは
鉄骨は、火災で高い温度にさらされると強度が下がります。建築基準法では、建物の規模や用途などに応じて、柱・梁などの主要構造部に耐火性能が求められる場合があります。
鉄骨造の建物でこの性能を満たす方法の一つが、鉄骨を耐火材料で覆う「耐火被覆」です。耐火構造の方法は、国土交通省の告示で定められたものや、国土交通大臣の認定を受けたものがあります。現場では、仕様で決められた材料・厚さなどを守って施工することが求められます。
耐火被覆工の主な工法
国土交通省の公共建築工事標準仕様書では、耐火材吹付け、耐火板張り、耐火材巻付け、ラス張りモルタル塗り、耐火塗料等が示されています。実際に用いる材料・工法は、建物の仕様や認定内容によって異なります。
工法 | 内容 |
|---|---|
耐火材吹付け | ロックウールなどを主な材料とした耐火材を、鉄骨に吹き付ける |
耐火板張り | 耐火板を、鉄骨を囲むように張る |
耐火材巻付け | シート状・フェルト状の耐火材を鉄骨に巻き付け、ピンなどで固定する |
ラス張りモルタル塗り | 鉄骨にラス(金網)を張り、その上にモルタルを塗る |
耐火塗料 | 熱を受けると発泡する塗料を塗る。塗装工が担当する場合もある |
会社がどの工法を扱っているかで、覚える作業が大きく変わります。

耐火被覆工の仕事内容・作業の流れ
例として次のような工程があります。実際の順序や役割分担は、会社や現場によって異なります。
吹付け工法の例
施工範囲と仕様(材料・厚さなど)を確認する
鉄骨表面の汚れや付着物、取付金物の状態などの下地を確認する
周囲の壁・床・設備に材料が付かないよう、シートなどで養生する
材料を混ぜ合わせ、吹付け機械を準備する
鉄骨に吹き付ける
所定の厚さが確保されているかを確認し、不足部分を補修する
養生を外し、片付けと清掃を行う
巻付け・耐火板張りの例
鉄骨の寸法を測る
耐火材や耐火板を寸法に合わせて切断する
鉄骨に巻き付ける、または張り付ける
ピンや金物などで固定する
継ぎ目やすき間を処理し、仕様どおりか確認する
耐火被覆は、鉄骨を組み立てた後、仕上げ工事で隠れる前に行います。設備の吊り金物などとの取り合いがあり、ほかの業者の作業で被覆が欠けた場合に補修を行うことがあります。
似た仕事との違い
仕事 | 目的 | 主な施工対象 |
|---|---|---|
耐火被覆工 | 火災時に鉄骨の温度上昇を抑え、求められる耐火性能を確保する | 鉄骨の柱・梁など |
保温工(熱絶縁工) | 熱の出入りを抑える(保温・保冷) | 配管・ダクト・機器など |
アスベスト除去 | 石綿を含む建材を、決められた手順で取り除く | 解体・改修する建物の既存建材 |
塗装工 | 美観や保護のための塗装。耐火塗料を扱う場合もある | 外壁・鉄部など |
「耐火」と「保温・断熱」は、どちらも材料で覆う作業ですが、目的が違います。保温の仕事は「保温工(熱絶縁工)の仕事内容」で扱っています。
アスベストとの関係
過去には、石綿を含む吹付け材が鉄骨の耐火被覆などに使われた建物があります。石綿を重量の0.1%を超えて含有する製品は、2006年に製造・輸入・譲渡・提供・使用等が原則禁止され、その後に残っていた猶予品目も2012年までに禁止されています。そのため、現在の耐火被覆工事と、既存建物に残る石綿含有の耐火被覆材は分けて考える必要があります。
一方で、古い建物の改修・解体で既存の被覆材を扱う場合は、事業者が工事前に石綿の有無を調査します。石綿を含む建材の除去は、別の手順で行う作業です。詳しくは「アスベスト除去の仕事内容」で扱っています。

未経験者が最初に担当する仕事
材料の運搬、機械への材料の補給
養生シートの取付けと撤去
吹付けホースの取り回しの補助
耐火板の寸法測定や切断の補助
片付け、清掃
吹付けは、厚さを均一にする技術が必要です。最初は周辺作業を担当しながら、材料の扱い方や仕様の見方を覚えていきます。どの段階から吹付けや取付けを任されるかは、会社に確認してください。
資格・教育
耐火被覆工として入職するために、全員があらかじめ取得しなければならない1つの資格があるわけではありません。ただし、求人ごとに応募条件は異なり、担当する作業によっては法令で定められた教育の受講や資格が必要になります。
作業 | 必要になるもの |
|---|---|
足場の組立て・解体・変更の作業(地上または堅固な床上での補助作業を除く) | 足場特別教育 |
高さ2m以上で作業床の設置が困難な場所で、フルハーネス型墜落制止用器具を使用する作業(ロープ高所作業を除く) | フルハーネス特別教育 |
高所作業車の運転 | 作業床の高さにより、特別教育または技能講習 |
研削といしの取替え、または取替え時の試運転 | 特別教育 |
新たに職長等の職務に就く場合 | 事業者が行う職長教育 |
足場の上で吹付けや取付けをするだけの場合は、足場特別教育の対象とは区別されます。担当する作業と教育の受け方は、応募前に確認してください。

安全面で知っておきたいこと
粉じん:吹付けや切断では、粉じんが発生することがあります。材料や作業条件に応じて、防じんマスクなどの呼吸用保護具や保護メガネを使います。どの保護具を使うかは、会社の指示と材料の説明書で確認します。
高い場所での作業:梁などへの施工では、足場や高所作業車を使います。高さ2m以上で墜落のおそれがある場合、事業者は場所の状況に応じて、作業床の設置や、端・開口部への囲い・手すり・覆い等の措置を行います。
暑さ:法令上「熱中症を生ずるおそれのある作業」に該当する場合、事業者は症状を報告する体制を整え、作業からの離脱・身体の冷却・必要に応じた医師の診察等の手順を定めて周知します。

住み込みで確認すること
現場が変わるたびの移動方法と、遠方の現場への対応
作業着の替えや洗濯の環境(吹付け作業では作業着が汚れることがあるため)
保護具の支給範囲と、消耗品の交換方法
寮費、食事、入寮時の費用、赴任時の移動費
入社時の移動費は「住み込みの赴任交通費」で扱っています。
求人票で確認するポイント
項目 | 見るところ | 確認したい理由 |
|---|---|---|
工法 | 吹付け・巻付け・耐火板張りのどれを扱うか | 覚える作業と使う機械が変わるため |
仕事内容 | 新築か、改修も含むか | 改修では既存建材の扱いを確認する必要があるため |
保護具 | 防じんマスク等の支給、交換の方法 | 粉じん対策に直接関わるため |
契約形態 | 雇用契約か、請負・業務委託か | 社会保険や給与の扱いが変わるため |
給与形態 | 日給・月給、休工日の扱い | 休工日の賃金は、給与形態や就業規則・賃金規定等によって異なるため |
教育 | 特別教育などの受講機会と費用負担 | 担当できる作業の範囲に関わるため |
寮 | 寮費、洗濯設備、現場までの距離 | 毎月の出費と生活のしやすさに関わるため |
面接で聞いておきたい質問
会社で主に扱っている工法は、吹付け・巻付け・耐火板張りのどれですか。
入社後、最初はどのような作業を担当しますか。
防じんマスクなどの保護具は支給されますか。フィルターなどの交換はどうしていますか。
改修工事で既存の被覆材を扱うことはありますか。その場合、事前調査の結果は作業前に共有されますか。
雨や工程の都合で作業が休みになった日の給与は、どのような扱いになりますか。
雇用契約ですか。請負・業務委託ですか。
判断するときのポイント
扱う工法と、最初の担当作業が具体的に説明されるか
粉じん対策や保護具について、質問に具体的に答えてもらえるか
新築中心か改修を含むかで、自分が納得できる働き方か
よくある質問
Q. ロックウールとは何ですか?
岩石などを原料とした繊維状の材料で、吹付け工法などの耐火被覆材に使われるものがあります。使う材料の種類は、仕様や会社によって異なります。
Q. 耐火被覆工と保温工は同じ会社で行うことがありますか?
会社によっては両方を扱う場合があります。求人の仕事内容に「耐火被覆」と「保温」のどちらが書かれているかで、主に担当する作業を確認してください。
Q. 粉じんが気になりますが、応募してもよいでしょうか?
気になる場合は、扱う工法と保護具の使い方を面接で具体的に聞いてから判断するのが確実です。耐火板張りのように、吹付け以外の工法を中心とする会社もあります。
まとめ
応募前に確認したいのは、次の3点です。
会社が扱う工法と、最初に担当する作業
粉じん対策として支給される保護具と、その使い方
新築中心か、改修で既存建材を扱うことがあるか
この3点が分かれば、仕事の中身と、自分が安心して続けられるかを判断しやすくなります。工法を知らないまま入社すると、想定していた作業と実際の現場が違うことがあります。
判断の軸は、扱う工法と安全対策を、自分が納得できる形で説明してもらえるかです。質問への答え方から、教える体制の様子も見えてきます。
今日できるのは、気になる求人に書かれた工法名を確かめ、面接で保護具について1つ質問を用意することです。
建物の安全を支える工程は、仕上げで見えなくなる場所にもあります。その仕事に納得して踏み出せる職場を選んでください。

