工場のポンプやコンベア、プラントの送風機。大きな機械は、運び込んで床に置けば動くわけではありません。決められた位置に、決められた高さと向きで据え、ほかの機械や配管と軸がずれないように合わせてから固定する必要があります。
この記事では、工場やプラント、設備施設で機械を所定の位置に据え付け、水平や芯を合わせて固定し、試運転へつなぐ仕事を「機械据付工」として扱います。担当する範囲は会社によって異なります。
据付の流れ、芯出しとは何をするのか、重量鳶とどこが重なりどこが違うのか、担当作業ごとの資格・講習を順に見ていきます。
機械据付工が関わる「機械器具設置工事」の範囲
建設業法の業種区分では、機械器具設置工事は、機械器具の組立てなどによって工作物を建設したり、工作物に機械器具を取り付けたりする工事とされています。国土交通省の資料で例に挙がっているのは次の工事です。
プラント設備工事
運搬機器設置工事(昇降機の設置工事を含む)
内燃力発電設備工事
集塵機器設置工事
給排気機器設置工事(トンネル・地下道等の給排気用)
揚排水機器設置工事
ダム用仮設備工事、遊技施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車設備工事
ただし、機械器具の種類によって電気工事や管工事などと重なるものは、原則としてそれぞれの専門の工事に区分し、どれにも当たらない機械器具や複合的な機械器具の設置が機械器具設置工事になると整理されています。建物の中の通常の空調機器の設置は、管工事の側に入ります。
据付の流れ:基準線から試運転まで
例として次のような工程があります。実際の順序や役割分担は、会社や現場によって異なります。
ここでは、名古屋市上下水道局が発注する機械設備工事の施工管理基準にある、ポンプや送風機などの標準的な据付手順を例にします。1つの発注者の基準で、上下水道施設の機械設備が対象です。工場やプラントの工事でも同じ手順・同じ確認方法になるとは限りません。
基準線を決めて墨を出す:建物の通り芯や基準点から、機械を据える位置の線と高さの基準を床や壁に写す
基礎とアンカーボルトの準備:基礎の位置・大きさ・深さを点検し、アンカーボルトを入れる穴を確認する

機械を仮置きする:転倒や損傷が起きないよう養生し、地面に直接触れないよう仮置き台を使う

一次芯出し:仮のライナーの上に機械を載せ、基準線に中心を合わせ、水準器でレベルを確認する
アンカーボルトを固定する:アンカーボルトの穴にモルタルを充填して固める
二次芯出し:本ライナーに入れ替えて高さと水平を微調整し、ライナーを溶接で固定する
グラウチング:機械の床盤と基礎の間を無収縮モルタルで隙間なく埋める
付属品の取付けと配管の接続、試運転の準備
この基準では、芯出しや据付精度の確認、試運転などの節目で、発注者の監督員が立ち会う項目が定められています。作業の区切りごとに、測った結果を記録して確認を受ける仕事だといえます。
芯出し・レベル調整とは何をしているのか
同じ基準では、ライナーを機器の据付レベルや水平度を微調整するために床盤の下に入れるものと説明しています。勾配のついたライナーと平らなライナーを組み合わせ、勾配ライナーを差し込む量で高さを細かく変えます。
モーターとポンプのように2台の機械を軸でつなぐ場合は、つなぎ目(カップリング)にダイヤルゲージを当てて軸を回し、軸の中心のずれと、合わせ面の傾きを測ります。ずれが残ったまま運転すると、振動や部品の傷みにつながるため、許容値に収まるまでライナーなどで調整します。どこまで合わせるかの数値は、発注者の基準やメーカーの基準、設計図書で決まります。

重量鳶とどこで重なり、どこで分かれる?
業種区分の上では、「とび・土工・コンクリート工事」の中に、機械器具や建設資材などの重量物をクレーン等で運搬・配置する工事が含まれています。重量物を運び込んで所定の場所に置く工程は、重量鳶の仕事と重なる部分です。
工程 | 重量鳶の仕事と重なるところ | 機械据付の仕事の中心 |
|---|---|---|
搬入・揚重 | 重量物をクレーン等で運び、所定の場所へ配置する | 搬入経路や仮置き場所を確認し、据付の段取りにつなげる |
位置決め | 重量物を基準の位置へ寄せる | 基準線に中心を合わせる |
芯出し・レベル | — | ライナーと計測器で高さ・水平・軸のずれを合わせる |
固定 | — | アンカーボルトの固定、グラウチング |
接続・試運転前 | — | 付属品の取付け、配管との接続、試運転の準備 |
1社が搬入から据付まで担当するのか、工程ごとに会社が分かれるのかは、会社や契約によって異なります。「重量鳶」の求人でも芯出しまで担当する場合や、「機械据付」の求人でも搬入から関わる場合があるため、担当工程を確認してください。重量物の搬入・移動については「重量鳶の仕事内容」で詳しく扱っています。
未経験者が最初に担当する作業の例
未経験の場合、先輩の職人の横で、たとえば次のような作業から覚えていきます。担当は会社によって異なります。
墨出しの補助:基準線を床に写すときに、墨つぼや下げ振りを持つ
仮置きの養生:機械が転倒したり傷ついたりしないよう、仮置き台や養生材を用意する
ライナーや工具・計測器の準備:水準器やダイヤルゲージを使う前後の手入れ
測定値の記録:先輩が読み上げた数値を記録表に書き込む
記録表に数値を書き込む作業は、どこを何回測れば据付が終わるのかを覚える近道になります。

資格・教育:担当する作業ごとに分けて考える
機械据付工として入職するために、全員があらかじめ取得しなければならない1つの資格があるわけではありません。ただし、求人ごとに応募条件は異なり、担当する作業によっては法令で定められた教育の受講や資格が必要になります。
担当する作業 | 関係する資格・教育 | 条件 |
|---|---|---|
玉掛け | 玉掛け技能講習/特別教育 | つり上げ荷重1t以上は技能講習、1t未満は特別教育 |
移動式クレーンの運転 | 免許/技能講習/特別教育 | 5t以上は移動式クレーン運転士免許、1t以上5t未満は小型移動式クレーン運転技能講習、1t未満は特別教育 |
クレーン(移動式クレーンを除く)の運転 | 免許/技能講習/特別教育 | つり上げ荷重5t以上は原則としてクレーン・デリック運転士免許。5t以上の床上操作式クレーンは同免許または床上操作式クレーン運転技能講習。5t未満は特別教育 |
フォークリフトの運転 | 技能講習/特別教育 | 最大荷重1t以上は技能講習、1t未満は特別教育 |
高所作業車の運転 | 技能講習/特別教育 | 作業床の高さ10m以上は技能講習、10m未満は特別教育 |
ライナーの固定などのアーク溶接 | 特別教育 | アーク溶接等の業務に就く場合 |
ガス溶接・溶断 | 技能講習 | 可燃性ガスと酸素を使う溶接・溶断・加熱の業務 |
高い場所での作業 | フルハーネスの特別教育 | 高さ2m以上で作業床の設置が困難な場所で、フルハーネス型を使用する作業(ロープ高所作業を除く) |
使う機械のつり上げ荷重や最大荷重で、必要な資格・教育が変わります。「重機を使う」とだけ書かれた求人では、どの機械をどの大きさで使うのかを確認してください。いずれも公道を走る自動車の運転免許とは別の制度です。
安全面:吊り作業と、動いている工場の中での工事
吊り荷の下や重機の周りは、事故が起きたときの被害が大きい場所です。
クレーン作業では、事業者が一定の合図を定め、原則として合図を行う者を指名して、その合図に従って運転させる
特定のつり上げ方法でつり上げられた荷の下への立入禁止が定められている
名古屋市上下水道局の基準でも、重機を使う作業では作業範囲の立入禁止、合図の確認、ワイヤロープや用具の点検、地盤の確認を行うとしている
製造業の工場の中で工事をする場合、発注した工場側の会社が製造業の元方事業者に当たる場合は、クレーン等の運転の合図などを統一して周知することが求められます。どの会社が当たるかは契約の形によります。
出張・住み込みで働く場合に確認すること
据付の現場は、工場や設備施設のある場所で決まります。会社の所在地から離れた現場では、出張や宿舎の扱いを確認します。
現場ごとの期間と、宿舎(寮・ホテル・借り上げ住宅など)の手配方法
宿舎から現場までの移動手段と、移動時間の扱い
住まいを移すときの交通費の扱い(住み込みの赴任交通費で整理しています)
求人票で確認するポイント
項目 | 見るところ | 確認したい理由 |
|---|---|---|
据付ける機械 | ポンプ、送風機、コンベア、プラント設備、昇降機など | 機械の種類で作業と覚える知識が変わる |
担当工程 | 搬入、芯出し、固定、配管接続、試運転準備のどこまでか | 重量鳶との違いがここで分かる |
使う機械と資格 | クレーン、フォークリフト、高所作業車の有無と大きさ | 必要な資格・教育と取得支援の有無が分かる |
溶接の有無 | ライナー固定や架台の溶接があるか | 特別教育や技能講習が関係する |
現場の範囲 | 近隣中心か、全国の出張か | 住まいと生活の形が決まる |
よくある質問
Q. 重量鳶の経験があれば、機械据付工として働けますか?
重量物を安全に運び、所定の位置に置く経験は、据付の前半の工程と重なります。芯出しやレベル調整、固定、試運転の準備まで担当する求人では、計測器の扱いや記録の付け方を新たに覚えることになります。担当工程を面接で確認してください。
Q. 据付の精度はどうやって決まるのですか?
どこまで合わせるかの数値は、発注者の基準、メーカーの基準、設計図書で決まります。職人が現場の感覚だけで決めるものではなく、決められた方法で測り、記録して確認を受けます。
Q. 据付けた機械の点検や修理も担当しますか?
据付後の点検・修理は、設備保全やメンテナンスの会社が担当する場合もあります。据付だけの会社か、その後の保守まで行う会社かは、求人票と面接で確認してください。
まとめ
機械据付工の仕事を見るときのポイントは3つです。
運ぶ仕事ではなく、合わせて固める仕事:搬入の後、基準線・レベル・軸を合わせ、固定して試運転につなぐところに中心がある
重量鳶との分担は求人ごとに違う:どこからどこまでを担当するかで、覚える技術も必要な資格も変わる
資格は作業と機械の大きさで決まる:玉掛け、クレーン、フォークリフト、溶接など、担当する作業ごとに確認する
わずかなずれを調整して、大きな機械が静かに回り始める瞬間に立ち会える仕事です。

