寮を出ることが決まると、「クリーニング代はいくら取られるのか」「壁の傷は自分が払うのか」が気になってきます。最後の給料から差し引かれるなら、次の生活に使えるお金も変わります。
先に答えると、社員寮の退去費用を誰が負担するかは、契約や寮規程の内容、傷や汚れの状況などによって変わります。確認するのは次の3つです。
寮がどんな住まいか(会社の持ち物か、会社が借りた部屋か、自分名義の賃貸か)
寮規程や入寮時の書面に、退去時の費用がどう書かれているか
傷や汚れが、普通に暮らしていてできたものか、それを超えるものか
次の住まいと仕事を探す方へ
月々の寮費だけでなく、初期費用・退去時の清掃代も比べて選びましょう。
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この記事では、この3つの順に確認の仕方を説明し、請求書を受け取ったときの見方と、入寮前から退去後までのチェックリストをまとめます。退去の期限については「退職したら寮はいつまで住める?」で扱っています。
まず確認する:あなたの寮はどんな住まいか
住まいの種類 | 部屋の契約・利用の関係 | 退去費用について確かめる書類 | 確認すること |
|---|---|---|---|
会社が所有する寮・社宅 | 社員は会社の住まいを利用する | 寮規程、入寮時の書面、就業規則など | 退去時の費用負担の条項、定額のクリーニング代の有無 |
会社が借りた部屋(借上げ寮・借上げ社宅) | 大家と会社が賃貸借契約を結び、社員は会社から部屋を利用する | 寮規程、入寮時の書面、就業規則など | 大家から会社に来た請求のうち、社員に求める部分があるか、その根拠は何か |
自分名義で借りた部屋(住宅手当など) | 社員が大家と直接、賃貸借契約を結ぶ | 自分が結んだ賃貸借契約書 | 原状回復と特約の条項 |
会社の寮や借上げの寮で、社員と会社の利用関係がどんな契約にあたるかは、寮費の額や取り決めの内容によって変わります。賃貸借契約にあたるとは限らず、寮規程だけで負担が決まるとも言い切れません。まずは、自分がどの書面に署名し、どんな説明を受けたかを確認してください。
借上げの寮では、退去時の請求はまず大家から会社に届きます。「大家から請求されたので全額払ってほしい」と言われたら、社員に求める根拠がどの規程や取り決めにあるのかを確認しましょう。社有の寮と借上げの寮の違いは「社宅とは?」で整理しています。

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国交省のガイドラインはどこまで参考になるか
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、民間賃貸住宅の退去時のトラブルを防ぐために、費用負担の一般的な基準を示したものです。考え方の柱は次のとおりです。
原状回復は、借りたときの状態に戻すことではない
普通に暮らしていて生じる汚れや、年数による劣化の修繕費は、家賃に含まれる
故意や過失、通常の使い方を超える使い方でできた傷や汚れは、借りた側の負担になる
借りた側の負担分も、建物や設備の経過年数が長いほど小さくする
ただし、ガイドラインが想定しているのは、家賃が市場の相場程度の民間賃貸住宅です。また、すでに契約を結んでいる場合は、その契約の内容に沿って扱うのが原則とされています。そのため、ガイドラインがどこまで参考になるかは、寮の種類によって分かれます。
住まいの種類 | ガイドラインの位置づけ |
|---|---|
会社が所有する寮・社宅 | 直接の基準ではありません。寮規程や入寮時の書面の内容を確認し、書き方があいまいな点は話し合いの参考にします |
会社が借りた部屋(借上げ) | 大家と会社のあいだは民間の賃貸借契約なので、その精算の参考になります。社員に求める金額の根拠は、会社の規程や社員との取り決めで確認します |
自分名義で借りた部屋 | 自分が結んだ契約書の内容に沿って扱うのが原則です。書き方があいまいな点は、ガイドラインを参考に話し合います |
ガイドラインがあるからといって、社員寮での請求を一律に否定できるわけではありません。逆に、規程や書面に書かれていない費用を求められたときは、根拠を確認する材料になります。
費目ごとに見る:請求される可能性があるもの
費目 | 請求の主な根拠 | 確認すること |
|---|---|---|
クリーニング代(定額) | 入寮時の書面や規程で金額を決めている | 金額と、入寮前に説明を受けて同意しているか |
壁や床の傷・汚れの補修 | 故意・過失、通常を超える使い方 | どの傷か。入寮時からあった傷ではないか。補修の範囲は |
備品や家電の破損・紛失 | 寮規程の弁償の条項 | 年数による故障か、使い方による故障か |
鍵の紛失・交換 | 鍵の紛失、返却しなかった | 返却の日と方法、合鍵の扱い |
残した私物の処分 | 退去後に残った物の処分費 | 退去日までに処分や持ち出しができるか |
最終月の寮費・光熱費 | 日割りか満額か | 精算の方法と時期 |
求人票に「退寮費用無し」と書かれていても、清掃代だけを指すのか、壊した設備の修理代まで含むのかは、具体的な記載がなければ分かりません。入寮前に、対象となる費用と対象外の費用を書面で確認しておきましょう。

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最後の給料から差し引かれる場合
退去費用を給料から差し引くと言われたときは、次の4つを分けて考えてください。
請求の根拠:そもそも、その費用を自分が払う義務があるのか。どの規程や書面にもとづく請求か
賃金の全額払いの原則:賃金は全額を支払うのが原則です(労働基準法24条)。給料から差し引けるのは、法令に定めがあるものか、労使協定で定めたものに限られます。労使協定があるからといって、どんな費用でも差し引けるわけではありません
本人の同意:会社が一方的に「給料と相殺する」ことは問題になります。差し引く金額と内容に、自分が納得して同意しているかを確かめます
差し引きの方法:何をいくら引くのか、給与明細のどこに書かれるのか、分割にできるのか
内容に疑問があるまま同意を求められたら、すぐに署名せず、明細と根拠を確認してからにしましょう。天引きの仕組みは「寮費とは?」でも扱っています。
請求書を受け取ったときの確認
明細をもらう:箇所、工事の内容、単価、数量が分かるもの。「一式」とだけ書かれていたら、内訳を求めます
根拠を確かめる:寮規程や入寮時の書面の、どの条項にもとづく請求か
入寮時の記録と照らし合わせる:入寮時の写真やチェック表と比べます
年数による劣化が混ざっていないかを見る:普通に暮らしていてできた汚れまで請求されていないか
質問は記録が残る形でする:メールやメッセージを使います
それでも話がまとまらない場合の相談先は、問題の種類で分かれます。会社との寮の取り決めや給料からの差し引きについては、都道府県労働局の総合労働相談コーナーや労働基準監督署に相談できます。自分名義の賃貸なら、消費生活センター(消費者ホットライン188)が窓口です。
入寮前から退去後までのチェックリスト
時期 | やること |
|---|---|
入寮前 | 規程や誓約書の退去費用の条項を読む。定額のクリーニング代と、「退寮費用無し」の範囲を確認する |
入寮当日 | 部屋全体と、すでにある傷を日付の分かる形で撮影する。気づいた傷は会社に書面で伝える |
住んでいる間 | 壊したり故障したりしたら、すぐに報告する |
退去日が決まり次第 | 立会いの有無と日時、鍵の返し方、私物の処分方法を確認する |
退去当日 | 掃除をする。立会いで指摘された箇所は、その場で写真とメモを残す |
退去後 | 明細が届く時期と、精算の方法(給料からか、振込か)を確認する |
寮に住民票を移していた場合は、退去後に住所変更の手続きも必要になります。費用の精算とは別の手続きです。流れは「社員寮の住民票と転居手続き」で確認できます。

※画像はイメージです。
よくある質問
Q. 入寮したときに写真を撮っていませんでした。
会社に入寮時の点検記録があるかを聞いてください。前の入居者のときからある傷かどうかは、記録がないと判断が難しくなります。今からでも、退去前の部屋の状態は撮影しておきましょう。
Q. 立会いがないまま退去し、あとから請求が届きました。
明細と、指摘された箇所の写真を求めてください。自分が退去したときに撮った写真と照らし合わせて確認します。
Q. 一度には払えない金額を請求されました。
まず金額の根拠を確認し、そのうえで分割払いを相談してください。給料から差し引く形にする場合は、上の4つの点を確かめてから同意しましょう。
次の寮では「出るときの決まり」を先に読む
社員寮の退去費用は、寮の種類、規程や書面の内容、傷や汚れの原因の3つで考えると整理できます。請求を受けたら、明細と根拠を確かめ、給料から差し引かれる場合は同意の前に内容を確認してください。
次に寮付きの仕事を探すときは、寮費や設備と一緒に、退去時の費用の決まりを書面で見せてもらえるかを確認してください。面接での聞き方は「面接で寮について聞くことチェックリスト」にまとめています。出るときの決まりまで分かっていれば、新しい寮での生活を安心して始められます。
次の住まいでは、入居時の費用だけでなく、退去の予告期限、清掃・修繕費、給与からの精算の有無を先に確認しておきましょう。
清掃代や破損時の修理代がどこまで対象になるかは記載がありません。寮費や光熱費も含め、入寮前に負担範囲を書面で確認してください。

