建設の仕事に移るとき、「毎日何時に帰れるのか」「残業代はきちんと出るのか」は気になるところです。ただ、その答えは求人票の残業欄を1行読むだけでは出ません。
求人票に書かれる「月平均○時間」は平均の目安で、毎月の上限ではありません。「基本的に残業なし」も、残業が一度も起きないという約束ではありません。帰る時刻と残業代を見積もるには、次の4つを順に確認します。
勤務時間と休憩から、1日の所定労働時間を出す
残業欄の数字と書き方を読む
36協定の特別条項があるかを見る
残業代の払われ方を確かめる
「残業」には2つの線がある
法定労働時間 労働基準法が決めている上限で、休憩を除いて1日8時間・週40時間です。これを超えて働いた時間が「法定時間外労働」で、割増賃金が必要になります。割増率は25%以上で、1か月の時間外労働が60時間を超えた部分は50%以上です。会社に集合してから現場へ向かう移動の時間が労働時間に入るかどうかは、「建設現場への移動時間は労働時間?」で説明しています。
所定労働時間 会社が決めた勤務時間から休憩を引いた時間です。8時間より短い会社もあります。所定労働時間は超えたけれど法定の8時間以内に収まる時間を「法定内残業」といいます。法定内残業の時間にも賃金は払われますが、割増を付けるかどうかは会社の決まりによります。
所定労働時間と法定労働時間は分けて確認します。所定時間を超えた分の賃金と、法定時間外に該当する分の割増について、就業規則や労働条件通知書で確かめてください。
なお、1か月単位や1年単位の変形労働時間制をとっている会社では、あらかじめ8時間を超える日を決めていることがあります。その日は、決めた時間までは法定時間外労働になりません。求人票の勤務時間欄に「変形労働時間制」と書かれていたら、繁忙期と閑散期の勤務時間を確認してください。

※画像はイメージです。
残業の説明は期間と前提を確認する
「基本的に残業なし」「月平均○時間」などの表現では、対象となる部署や期間、繁忙期の状況を聞きます。始業から終業までの長さだけでなく、休憩時間と実労働時間も確認してください。
「基本的に残業なし」をどう受け取るか
ハローワークの求人票では、時間外労働の有無を書き、「あり」の場合は月平均の残業時間数を書くことになっています。月平均は、多い月と少ない月をならした数字です。
「基本的に」は普段の状態を表す言葉です。どんなときに残業が出るのか、出たときにどれくらいになるのかは、この一文からは分かりません。
面接では、次のように数字で聞くと答えが具体的になります。
「この1年で、残業があった月はありますか。多い月で何時間くらいでしたか」
「残業が出たとき、残業代はどの月の給料で払われますか」
「休憩は1日何分ですか」

※画像はイメージです。
36協定の上限は「平均」とは別のもの
会社が法定労働時間を超えて残業や法定休日の労働をさせるには、労使で36協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。上限には「原則」と「特別条項」の2段階があり、休日労働を数えに入れるかどうかも項目ごとに違います。
区分 | 上限 | 法定休日の労働 |
|---|---|---|
原則 | 時間外労働は月45時間・年360時間(1年単位の変形労働時間制の対象者は月42時間・年320時間) | 含まない |
特別条項(臨時的な特別の事情がある場合) | 時間外労働は年720時間以内 | 含まない |
同上 | 時間外労働と休日労働の合計が、単月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内 | 含む |
同上 | 時間外労働が月45時間を超えられるのは年6か月まで | — |
建設業にも、この上限は2024年4月から適用されています。ただし、災害時の復旧・復興の事業には、「単月100時間未満」と「2〜6か月平均80時間以内」の規制が適用されません。年720時間などのそれ以外の上限は適用されます。
特別条項について説明がある場合は、適用される事情と限度を確認します。月平均の残業時間だけでは、繁忙期の働き方までは分からないため、通常月と忙しい時期を分けて聞いてください。
残業代の払われ方を確かめる
固定残業代がある場合は、対象の時間数と金額、超過した分の支払いを確認します。給与例に含まれる残業代を、自分にも毎月支給される固定額とは考えないようにしましょう。所定時間と法定時間が異なる場合の計算も確認してください。
日給の場合 日給の求人では、日給が何時間分の働きに対する額か、残業が出たら日給とは別に払われるかを聞きます。給与形態ごとの違いは「月給・日給月給・日給はどう違う?」で説明しています。
入社後 給与明細の時間外の時間数と、自分でメモした退勤時刻を見比べます。求人票と実際の扱いが違うときの確認の手順は「求人票と実際の条件が違うときは?」にまとめています。

※画像はイメージです。
残業と一緒に確認したい、別の時間
1日の拘束時間は、残業だけで決まるわけではありません。始業前の朝礼や準備は「建設現場の朝礼・準備は労働時間?」、休日出勤と振替休日・代休の違いは「週休2日と完全週休2日は何が違う?」、雨で作業が止まった日の給料は「建設現場は雨の日休み?」で扱っています。
よくある質問
Q. 「残業少なめ」と聞いて入ったのに、毎日1時間ほど残っています。 まず、給与明細に残業時間と残業代が載っているかを確認してください。載っていない、または説明と大きく違う場合は、自分の記録をもとに会社に確認します。
Q. 残業が少ない求人のほうがいいのでしょうか? 基本給や手当、勤務日数が違う会社同士では、残業時間の多い少ないだけで収入は比べられません。同じ会社・同じ給与条件で、残業代が実際に働いた時間に応じて払われる場合は、残業が少ない月はその分だけ残業代が減ることがあります。給料例に残業代が入っている求人は、残業がない月の額も聞いておくと、寮費などを払ったあとの生活を見積もりやすくなります。
Q. 夜勤の現場でも同じ読み方でいいですか? 法定時間外労働かどうかの数え方は同じです。ただし、夜の時間帯の割増は残業とは別の決まりなので、夜勤がある求人では、夜の勤務の手当や割増がどう払われるかも確認してください。
まとめ
求人票の残業欄は、所定労働時間と法定労働時間、月平均の残業時間、36協定の特別条項、残業代の払われ方の4つに分けて読みます。「基本的に残業なし」「週2時間程度」は普段の目安で、忙しい月の上限ではありません。休憩時間と、多い月の残業時間を面接で聞いておけば、毎日の帰る時刻と月の収入を具体的に見積もれます。

