求人票と給料・勤務時間・寮費が違うと気づいたら、応募時の求人ページを保存し、労働条件通知書や雇用契約書と同じ項目を比べてください。入社前なら変更の理由と契約条件を確認し、入社後なら勤務記録や給与明細も残します。
求人票と違うだけで直ちに違法と決まるわけではありませんが、求人票は意味のない書類でもありません。また、労働契約は署名の前に成立している場合もあります。ここでは、違いを確認する順番、勤務時間の記録方法、労基などの相談先、住み込みで辞める場合の注意点を整理します。
求人票の条件は、そのまま約束になるのか
厚生労働省は、求人誌やハローワークの求人票は募集の際に示す労働条件の目安であって、労働基準法第15条でいう労働条件の明示(働く人一人ひとりに書面などで示す条件)には当たらない、と説明しています。
一方で、厚生労働省の「確かめよう労働条件」では、面接や入社時の話し合いで条件を変えることに合意したといえる特別な事情がなければ、求人のときの条件が契約の内容になると考えられる、とも説明しています。裁判例として、求人票の条件は別の合意などがない限り雇用契約の内容になるとした判決(大阪高裁 平成2年3月8日)や、賃金を求人票の見込額より大きく下げて決めるべきではないとした判決(東京高裁 昭和58年12月19日)が紹介されています。
つまり、「求人票と違う=すぐ違法」でもなければ、「求人票はただの目安だから仕方ない」でもありません。違いがどこで生まれたのか、自分が何に合意したのかを、書類で確かめることが出発点になります。
いつ気づいたかで、やることが変わる
気づいた時期 | まずやること |
|---|---|
面接で違う説明を受けた | どの点が、なぜ違うのかを聞く。事務的な書き間違いなのか、条件を変えたいのかで話が変わる |
内定後、労働条件通知書・雇用契約書などを受け取った | 署名や返事をする前に求人票と並べて比べる。違う点はその場で確認する。内定の時点で契約が成立していると考えられる場合もあるので、合意の前に確かめることが大事 |
働き始めてから気づいた | 受け取った書類と、実際の勤務時間・給与明細を比べる。記録を残し始める |
寮に入ってから気づいた | 寮の利用規程や入寮時の書類と、天引きされた額を比べる |
職業安定法では、会社が募集のときに示した条件を変えたり、付け加えたり、削ったりする場合、その内容を応募した人に示さなければならないとされています。ハローワークも、やむを得ず変える場合は契約を結ぶ前に変更内容を示すよう求人を出す会社にお願いしています。何も説明がないまま条件が変わっている場合は、遠慮せずに確かめてかまいません。
入社後に分かった場合に知っておきたいのが、労働基準法第15条の2項と3項です。契約のときに示された労働条件が事実と違う場合、働く人はすぐに労働契約を解除できます。さらに、その仕事のために住む場所を変えた人が、解除の日から14日以内に帰郷する場合は、会社が必要な旅費を負担しなければならないとされています。寮に入るために遠くから引っ越してきた人にとっては、大事な決まりです。
ただし、ここでいう「示された労働条件」は、契約のときに書面などで示された条件のことです。求人票の記載と違うだけの場合や、寮費の違いがあった場合に、いつもこの決まりが当てはまるわけではありません。寮の扱いが労働条件として示されていたかどうかなど、事情によって判断が分かれます。辞めると決める前に、次の章の書類をそろえて、相談先で確かめてください。

※画像はイメージです。
並べて比べる5つの書類
書類 | 書いてあること | 残し方 |
|---|---|---|
求人票・求人ページ | 募集のときの給料、勤務時間、休日、勤務地、寮の条件 | 応募した時点の画面を、日付が分かる形で保存する |
面接で受け取った資料・メモ | 面接で聞いた説明 | 日時、相手の名前、聞いた内容をその日のうちにメモする |
労働条件通知書・雇用契約書など | 契約で決まった条件(両者が別の書類のこともある) | 写しをもらっておく。署名前に写真を撮っておく |
寮の利用規程・入寮時の書類 | 寮費、光熱費、退寮の決まり | 寮費や天引きの額が書かれたページを保存する |
給与明細 | 実際に払われた額と差し引かれた額 | 毎月保存する。勤務時間のメモと並べられるようにする |
1枚ずつ見るより、同じ項目を横に並べて比べると、どこで違いが生まれたのかが見えてきます。勤務時間に違いがあるときは、この5つに加えて、勤務シフト、タイムカードや勤怠画面、出勤を指示されたメッセージも保存します。自分のメモには日付、始めた時刻、終えた時刻、実際に休めた時間を書き、会社の記録と照合できるようにしておきましょう。

※画像はイメージです。
項目別に見る、違いに気づいたときの確認点
給料が説明と異なる場合は、基本給・手当・試用期間中の条件を分け、求人票と労働条件通知書を照合します。違いに気づいた項目と、いつ受けた説明かを整理して会社に確認してください。
「モデル月収」「月収例」には、年齢・家族構成・残業などの前提がある場合があります。例の前提と自分の条件が同じかを確認してください。
勤務時間・休日
始業・終業の時刻、休憩、休日に加え、残業の有無や交替勤務の組み方を、求人票・契約の書類・実際の勤務で比べます。「求人より長い」と感じたときは、次の点を具体的に記録してください。
求人票と労働条件通知書に書かれた始業・終業時刻
出社や集合を求められた時刻と、その後に何をしたか
実際に仕事を始めた時刻、終えた時刻、自由に休めた時間
勤怠記録と給与明細に反映された時間
会社の指示で事業場内で行う必要な準備や片付けなどは、労働時間に当たる場合があります。一方、寮を出た時刻からすべてが労働時間になるとは限りません。単なる移動か、指示された業務か、自由に過ごせたかなどで判断が変わります。時刻だけで結論を出さず、指示の内容も残して相談してください。
会社には「求人票の時刻と実際に指示された時刻が違います。この時間は勤怠上どう扱われ、給与にはどう反映されますか」と確認すると、比較する点が明確になります。
勤務地・仕事の内容 現在は、募集のときに示す事項に、就業場所や業務の「変更の範囲」も含まれています。聞いていない遠方の現場や別の仕事を当然のように指示される場合は、契約でどこまでの変更が決められているかを確かめます。
雇用形態 正社員と聞いて応募したのに契約社員だった、という食い違いもあります。契約期間や更新の考え方は「住み込み求人の「契約社員」とは?正社員との違いと、契約期間・更新・寮の扱いの確認ポイント」で解説しています。
寮費・寮の条件 給料は全額を払うのが原則で、差し引けるのは、所得税や社会保険料など法令で決まっているものと、会社と労働者の過半数代表などが労使協定を結んでいるものです。寮費の天引きが求人の説明と違う、聞いていない費用が引かれている、というときは、次の順で確かめます。
給与明細で、何の名目でいくら引かれているか
寮の利用規程や入寮時の書類に、寮費の額と負担の決まりがどう書かれているか
その寮費を給料から差し引く決まり(労使協定など)があるか、会社に確認する
寮費の内訳の見方は「寮費とは?給料から引かれる費用の内訳と、無料・補助あり求人で確認する6項目」にまとめています。
会社に確かめるときの伝え方
感情的にならず、書類の違いを事実として伝えると、相手も確認しやすくなります。口頭で聞いた場合も、後からメールやメッセージで同じ内容を送っておくと記録になります。
求人ページでは「〇〇」と拝見しましたが、本日いただいた労働条件通知書では「△△」となっています。どちらが正しい条件でしょうか。変更になった場合は、理由を教えていただけますか。
返事の内容も保存しておきましょう。書き間違いだった場合は、正しい条件で書類を作り直してもらいます。
相談できるところ
相談先は、求人を見つけた場所と、困っている内容で選べます。違法か判断できなくても相談できます。
労働基準監督署(労基):未払い賃金や残業代、労働時間など、労働基準関係法令に関する相談先です。求人内容との違いだけで違反や是正が決まるわけではないため、契約時の書類と実際の記録を持参します。窓口は厚生労働省の「労働基準行政の相談窓口」で確認できます。
総合労働相談コーナー:採用時の説明との食い違いや労働条件の変更など、どの窓口に相談すべきか迷う場合にも利用できます。募集・採用を含む労働問題を、無料・予約不要で相談できます。法令違反の疑いがあれば、担当部署に取り次がれます。所在地は厚生労働省の「総合労働相談コーナーのご案内」を確認してください。
ハローワークの窓口・求人ホットライン:ハローワークで公開・紹介された求人が対象です。求人票と実際の条件が違う場合は、応募した求人が分かる資料を添えて申し出ます。求人サイトのすべての募集を扱う専用窓口ではありません。詳しくは「ハローワークの求人票と実際が異なる旨の申し出等について」を確認してください。
相談時は、前の章の5つの書類に、勤務時間の記録と、いつ・誰から・何を説明されたかのメモを添えます。住み込みの場合は、現在の寮に住める期限や帰郷旅費の扱いもあわせて相談しましょう。会社の返答を待っている間でも、不安な点があれば相談できます。
出典:厚生労働省の上記3窓口案内。2026年11月2日確認。

※画像はイメージです。
よくある質問
Q. 内定の後で、給料を下げたいと言われました。断れますか? A. 変更に同意するかどうかは、条件を確かめたうえで考えられます。ただし、内定の時点で労働契約が成立していると考えられる場合もあり、署名していないかどうかだけで扱いは決まりません。変更に同意すると、変わった後の条件が契約の内容になる可能性があるので、返事や署名は内容を確認してからにしましょう。判断に迷うときは、上で紹介した「相談できるところ」で確かめてください。
Q. 寮に入った後で辞めることになったら、すぐ出ないといけませんか? A. 退寮の期限は会社や寮の規程によって違います。調べ方と次の住まいの段取りは「退職したら寮はいつまで住める?退去期限の調べ方と次の住まいを間に合わせる段取り」をご覧ください。帰郷旅費の決まり(労働基準法第15条3項)は、契約で示された条件が事実と違ったために契約を解除した場合のものです。
Q. 求人に書かれた「月収例」より少なかったのは、求人票と違うことになりますか? A. 月収例は、残業や手当など一定の前提を置いた例です。まず基本給や手当の額、残業時間の前提が求人に書かれていたかを確認し、その前提と比べてください。
出典・確認日
求人票と契約条件の関係:厚生労働省「求人票や求人広告と実際の条件が違った場合」、ハローワーク「労働法等に関する解説」。
労働時間の考え方:大阪労働局「労働時間の適正な把握のためのガイドライン」。
契約解除・帰郷旅費・賃金の控除:e-Gov「労働基準法」第15条・第24条。
いずれも2026年11月2日確認。個別の契約や事実関係によって扱いが異なります。
いま実際に条件の違いで困っているなら、まずは書類をそろえて、上の相談先に連絡してください。これから応募する人は、条件の内訳が明示されていれば、応募前に比較・質問しやすくなります。給料の内訳や試用期間中の条件まで書かれているかを見比べてみてください。
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