雇い入れ時の法定健康診断は、事業者が費用を負担すべきものとされています。一方、採用選考のために求められる診断書は、目的や必要性、費用の扱いを別に確認します。「入社前に受ける」という時期だけでは、どちらの健康診断かは判断できません。
答えを出すには、まず「何のための健康診断か」を確かめてください。入社前後の健康診断には、目的の違う2つがあります。
雇い入れ時の健康診断:労働安全衛生規則43条で、会社に実施が義務づけられています。費用は、法律で会社に実施が義務づけられている以上、会社が負担すべきものとされています(昭和47年9月18日 基発第602号)。
採用選考のために会社が求める診断書:法律上の義務ではありません。厚生労働省は、仕事のうえで合理的・客観的な必要性がない採用選考時の健康診断は行わないよう、事業主に求めています。
「入社前に自分で受けて」と言われたら、予約や支払いの前に、健康診断の目的、会社指定の医療機関と検査項目、誰が予約するか、立替えと精算の方法を確認します。最近受けた結果がある場合は、受診日と検査項目を会社に伝え、利用できるかを先に確かめてください。

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2つの健康診断の違い
項目 | 採用選考のための診断書 | 雇い入れ時の健康診断 |
|---|---|---|
根拠 | 会社の判断(法律の義務ではない) | 労働安全衛生規則43条 |
目的 | 応募者の状態を確認する | 入社後の配置と健康管理 |
費用 | 会社の方針次第で、確認が必要 | 会社が負担すべきものとされる |
注意点 | 必要性のない健康診断は、公正な採用選考に反するおそれがある | 採用するかどうかを決めるためのものではない |
受ける時期だけで、どちらの健康診断かを見分けることはできません。内定の前でも後でも、会社がどんな目的で求めているのか、なぜ必要なのか、費用をどう扱うのかを、会社の説明で確認してください。
雇い入れ時の健康診断の中身と、省略できる場合
検査の項目は法令で決まっていて、既往歴と業務歴、自覚症状と他覚症状、身長・体重・腹囲・視力・聴力、胸部エックス線、血圧、貧血、肝機能、血中脂質、血糖、尿、心電図の11項目です。

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対象になる人
会社が常時使用する労働者です。パートや契約社員などの短時間労働者は、厚生労働省の通達で、次の2つをどちらも満たす場合に対象とされています。
期間の定めのない契約で雇われている。または、期間の定めがあっても、契約期間が1年以上の予定、契約の更新により1年以上使用される予定、あるいは更新により1年以上使用されている(深夜業など特定の業務の場合は6か月以上)
週の所定労働時間が、同じ種類の業務をする通常の労働者の4分の3以上
1を満たし、週の所定労働時間が通常の労働者のおおむね2分の1以上の場合は、健康診断を行うことが望ましいとされています。自分が対象になるかは、契約の期間と週の労働時間を会社に確認してください。
3か月以内に受けた健康診断の結果を使える場合
医師による健康診断を受けた後、3か月を経過していない人が結果を証明する書面を提出した場合は、受けた検査に相当する項目を雇い入れ時の健康診断で省略できます。確認するのは、診断書を発行した日だけでなく実際の受診日と検査項目です。前の職場の結果があるから全部省けるとは限らないため、書面を会社に見せ、不足する項目と追加受診の必要性を確認してください。
費用
雇い入れ時の健康診断の費用は、厚生労働省の通達で、会社が負担すべきものとされています。
立替払いを求められた場合は、必要な検査項目と医療機関、領収書の宛名・提出方法、精算日を受診前に確認しましょう。検査代のほかに診断書の発行料・郵送代・交通費などがかかる場合は、それぞれ誰が負担するかも分けて聞きます。手元のお金が足りない場合は、会社で予約・支払いができるかを相談してください。採用選考のための診断書についても、会社の説明を受けてから費用の扱いを確認します。
入社前には、資格や講習の費用を会社がどこまで負担するかも確認しておきたいところです。健康診断の費用とは別の制度で決まるため、「資格取得支援の対象と費用返還の確認事項」で確認できます。
受診にかかった時間の給料
費用とは別に、受診にかかった時間の給料の扱いがあります。厚生労働省は次のように説明しています。
一般の健康診断(雇い入れ時・定期):仕事と直接関係するものではないため、受診時間の給料をどうするかは労使で決める。ただし、会社が払うのが望ましい
特殊健康診断(有害な業務に就く人が受けるもの):受診時間は労働時間なので、給料の支払いが必要
建設・住み込みの仕事で加わる健康診断
担当する作業によっては、一般の健康診断に加えて、次のような健康診断があります。
深夜業を含む仕事(夜勤・交替制):深夜業を含む業務に常時従事する対象者には、その業務への配置替えの際と、6か月以内ごとに健康診断を行います(労働安全衛生規則45条)。自分の勤務が対象となるかは会社に確認してください。
有害な業務:有機溶剤・石綿を扱う業務や、法令上の粉じん作業などでは、物質、作業内容、従事状況などに応じて特殊健康診断やじん肺健康診断の対象となる場合があります。職種名だけで一律に決めず、担当業務で必要な健診の種類と頻度を会社に確認してください。仕事の内容は「塗装工の仕事内容」「アスベスト除去の仕事内容」でも紹介しています
住み込み・即入寮で困りやすいこと
予約が入寮日に間に合わない:入社前に受ける場合、医療機関の予約に日数がかかることがあります。入社後に、会社が指定する医療機関で受けられるかを聞いてください
立替のお金が足りない:精算が最初の給料日になると、手元のお金が苦しくなります。精算の時期を確認しておきます(「給料の前払い制度」も参考にしてください)
前の職場の健診結果を取り寄せる時間:3か月以内の結果を使う場合、写しを手元に用意しておきます
どこで受けるか:遠方から赴任する場合、地元で受けるのか、寮の近くで受けるのかを決めておきます
入社時に提出する書類の全体は「即入寮で必要になるもの」にまとめています。

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会社に確認すること
この健康診断は、雇い入れ時の健康診断ですか。それとも選考のための診断書ですか。何のために必要ですか
費用は会社の負担ですか。立替の場合、精算の方法と時期を教えてください
受診する医療機関の指定と、必要な検査項目はありますか
3か月以内に受けた健診の結果は使えますか。足りない項目はありますか
受診する日は出勤扱いになりますか
夜勤や有害な業務がある場合、どの健康診断を受けることになりますか
よくある質問
Q. 健康診断の結果で不採用になることはありますか。
仕事のうえで合理的・客観的に必要な範囲を超えて健康状態を確認することは、就職差別につながるおそれがあるとされています。疑問がある場合は、ハローワークや労働局に相談できます。
Q. 結果で異常が見つかったら、どうなりますか。
会社は、異常の所見がある人について医師の意見を聞き、必要に応じて作業の調整などを行うことになっています(労働安全衛生法66条の4・66条の5)。治療については医療機関で相談してください。
「誰が払うか」は、健康診断の目的を聞けば分かる
入社時の健康診断は、雇い入れ時の健康診断か、採用選考のための診断書かで、費用の扱いが変わります。受ける時期ではなく、目的と必要性を会社に確認し、費用と受診日の給料はそれぞれ分けて聞いてください。
手持ちのお金が少ない状態で入寮する人は、立替の有無と精算の時期を先に聞いておくと、入社までの見通しが立ちます。必要な確認を済ませて、新しい職場での一日目を迎えてください。
出典・確認日:2026年11月2日
厚生労働省「労働安全衛生規則」第43〜45条:雇入時健診・直近の結果
鹿児島労働局・加治木監督署「労働相談事例」:健診費用と受診時間の賃金
厚生労働省「採用選考時の健康診断/健康診断書の提出」:目的と必要性
厚生労働省「健康診断を実施しましょう」:対象業務と健診の種類
厚生労働省「健康診断を受けている間の賃金」:一般・特殊健診の違い

