住み込みの現場仕事に応募するとき、「作業着や安全靴は自分で買うの?」と気になります。手持ちのお金が少ないまま即入寮する場合は、初日までにいくら必要かに直結します。
結論から言うと、作業着などは、会社ごとに支給・貸与・自己負担の扱いが異なることがあります。ただし、安全衛生上必要な保護具には、法令上、事業者側に備付け等が求められるものがあります。作業用品と保護具を分けて、それぞれの扱いと、給料から差し引かれるかどうかを入社前に確認しておきましょう。
この記事では、3つの負担の違い、現場で身につける物の例、給料から差し引かれるときの確認点、住み込みの人の準備を整理します。
作業用品と保護具は、分けて確認する
作業着などの作業用品:会社ごとの定めを確認する
労働基準法施行規則5条では、「労働者に負担させる食費、作業用品その他」が、定めがある場合に明示する事項とされています。ただし、必ず書面で交付される事項ではありません。
また、就業規則を作成する義務がある事業場では、食費、作業用品その他の労働者の負担について定めをする場合、その内容を就業規則に記載する必要があります(労働基準法89条)。
そのため、作業着などを自分で負担する決まりがあるかどうかは、どの書面・資料で確認できるかを会社に聞いておきます。求人票に「作業着支給」「制服貸与」と書かれていることもありますが、どこまでが対象かは会社によって違います。
安全衛生上必要な保護具:事業者側に求められるものがある
危険・有害な作業で必要になる保護具の中には、法令で事業者が備えることを求められているものがあります。たとえば労働安全衛生規則593条では、著しく暑熱な場所での業務や、ガス・蒸気・粉じんを発散する有害な場所での業務などについて、事業者は、そこで働く労働者に使用させるために、保護衣、保護眼鏡、呼吸用保護具等の適切な保護具を備えなければならないとされています。
作業着の扱いと同じ感覚で「保護具も全部自分持ち」と考えず、担当する作業で使う保護具を会社がどのように用意するのかを確認します。

「支給」「貸与」「自己負担」の違い
区分 | 費用 | 退職するとき | 買い替え・追加 |
|---|---|---|---|
支給 | 会社が負担し、本人のものになる | 返却しなくてよい場合がある | 何着まで、何年ごとに支給するかを確認 |
貸与 | 会社のもの | 返却を求められる場合がある | 破損・紛失したときの扱いを確認 |
自己負担 | 本人が負担 | 本人のもの | 会社の指定があるか(色・種類など)を確認 |
同じ会社でも、作業着は支給、安全靴は自己負担、というように物ごとに分かれている場合があります。一つずつ確認してください。
※この表は作業用品の扱いを整理したものです。法令上、事業者が備える必要のある保護具まで一律に自己負担になるという意味ではありません。
現場で身につける物の例
どんな物が必要になるかは、現場と作業の内容によって変わります。厚生労働省委託のテキストに載っている新規入場者教育の記載例では、ある現場のルールとしてヘルメット、安全帯、安全靴は着用し、保護メガネ、防じんマスク、手袋等は、必要な作業では着用することが挙げられています。これは1つの現場の例です。
物 | 使う場面 | 確認したいこと |
|---|---|---|
作業着 | 毎日の作業 | 支給枚数、夏用・冬用の有無 |
安全靴 | 現場全般 | 種類の指定、支給か自己負担か |
ヘルメット | 現場全般 | 会社のロゴ入りなど指定があるか |
手袋・保護メガネ・マスク | 作業に応じて | 消耗品として会社が用意するか |
フルハーネス型の墜落制止用器具 | 高い場所での作業 | 会社が用意するか、自分で用意する決まりか(法令上の扱いも含めて会社に確認) |
高さ2m以上で作業床を設けることが難しい場所で、フルハーネス型の墜落制止用器具を使う作業では、特別教育が必要です(ロープ高所作業を除く)。器具を誰が用意するかも、教育の受講と合わせて確認しておきます。

給料から差し引かれる場合に確認すること
作業着や安全靴の代金を、給料から差し引く会社もあります。賃金は全額払いが原則です。労働基準法24条で賃金から差し引けるものは、所得税や社会保険料など法令で定められたものと、労働者の過半数で組織する労働組合、またはそうした組合がない場合は労働者の過半数を代表する者との書面による労使協定があるものに限られます。厚生労働省も、税金の控除など法令に別段の定めがある場合と、労使の協定がある場合を、全額払いの原則の例外として示しています。
給料から差し引かれる場合は、次の点を確認しておきます。
何の代金を、いくら差し引くのか
1回で差し引くのか、何回かに分けるのか
給与明細のどの欄に記載されるのか
途中で辞めたときに、残りの代金をどう扱うのか
住み込み・即入寮の人が初日までに準備すること
手持ちのお金が少ない状態で即入寮する場合は、最初の給料日までに作業用品を買うお金が残るかが問題になります。次の順番で確認すると、初日に困りにくくなります。
会社に、支給・貸与される物の一覧を聞く
自己負担の物だけを書き出し、指定(色・種類)を確認する
給料からの控除にできるか、会社でまとめて購入してもらえるかを聞く
最初の給料日までの生活費と合わせて、必要なお金を計算する
入寮時の持ち物全体は「即入寮で必要になるものは?」、手持ちのお金が少ないときの考え方は「所持金が少ないとき」の記事でまとめています。給料日前にお金が必要になったときの制度は、「住み込み求人の給与前払いとは?」を参考にしてください。
求人票で見るポイント
項目 | 見るところ | 確認したい理由 |
|---|---|---|
作業着 | 「支給」「貸与」の表記と枚数 | 自分で用意する枚数が変わるため |
安全靴・ヘルメット | 福利厚生・待遇の欄 | 初日までの出費に関わるため |
保護具 | 仕事内容に高所作業などがあるか | 高額な器具が必要になる場合があるため |
控除 | 給与の欄の「控除あり」などの記載 | 最初の給料の手取りに関わるため |
面接で聞いておきたい質問
「作業着、安全靴、ヘルメットは、それぞれ支給ですか、貸与ですか、自己負担ですか」
「自分で用意する物に、色や種類の指定はありますか」
「作業用品の代金を給料から差し引く場合、どの書類で確認できますか」
「高い場所の作業がある場合、フルハーネスは誰が用意しますか」
「退職するとき、貸与された物は返却しますか」
よくある質問
Q. 前の現場で使っていた安全靴やヘルメットを使ってもいいですか?
現場や会社によって、色や種類の指定がある場合があります。持っている物を使えるかどうか、入社前に確認してください。使える場合は、初日の出費を抑えられます。
Q. 作業着が汚れたり破れたりしたら、自分で買い直すのですか?
支給・貸与の場合は、交換の決まりがあるかを会社に確認します。自己負担の場合でも、会社でまとめて購入して給料から差し引く方法をとる会社もあります。
Q. 作業用品の代金が高く、最初の給料がほとんど残らなかったらどうすればいいですか?
分割で差し引いてもらえないか、会社に相談してください。差し引かれた額と内容は、給与明細で確認できます。説明と違う控除があった場合は、明細を手元に残して会社に確認します。
まとめ
作業着や安全靴の負担は、「会社が出すか、自分が出すか」の2択ではありません。比べるときは、次の2つの軸で整理すると、求人ごとの違いが見えます。
お金の軸:その物の代金は、会社が出すのか、自分が出すのか。自分が出すなら、先に払うのか、給料から差し引くのか。
持ち物の軸:その物は、辞めたあとも自分のものか、会社に返すものか。
危険・有害な作業で使う保護具は、この2つの軸とは別に、法令上会社が備える必要があるものかどうかも合わせて確認します。
2つの軸で「作業着・安全靴・ヘルメット・保護具」を一つずつ確認すれば、初日までに必要なお金と、辞めるときの手続きの両方が見えてきます。
身につける物の不安がなくなれば、あとは新しい現場の仕事を覚えることに集中できます。

