求人で「ダクト工」という職種を見ても、何を作り、どこで働くのか想像しにくいかもしれません。ダクト工は、建物の空調・換気・排煙などで空気を通す「ダクト」を製作し、現場で取り付ける仕事です。会社によって、工場での製作が中心なのか、建設現場での取付が中心なのかが分かれます。この記事では、作業の流れ、似た設備系の職種との違い、資格や安全面、住み込みで働く場合に求人票で確認したい点を整理します。
ダクト工はどんな仕事か
ダクトとは
ダクトは、空気を送ったり排出したりするための管状の通り道です。建物の天井裏などに通され、次のような役割を担います。
空調機で温度などを調整した空気を、各部屋へ送る
室内の空気やトイレ・厨房などの空気を、外へ出す
火災時に煙を排出する
断面が四角い「角ダクト」と、丸い「丸ダクト」があります。材料には、亜鉛鉄板などの金属板が使われるものがあります。
ダクト工が担当する範囲
全国ダクト工業団体連合会は、ダクトの仕事を設計・製作・施工の流れで紹介しています。求人の「ダクト工」がどこを担当するかは、会社によって異なります。
段階 | 主な内容 | 主な働く場所 |
|---|---|---|
設計 | 施工図の作成、寸法の拾い出し | 事務所 |
製作 | 金属板の切断・折り曲げ・組立て | 工場 |
施工 | 取付位置の確認、吊り込み、接続、固定 | 建設現場 |
製作から取付まで一貫して行う会社もあれば、取付だけを担当する会社もあります。応募前に、どの段階を担当するのかを確認してください。

ダクト工の仕事内容・作業の流れ
例として次のような工程があります。実際の順序や役割分担は、会社や現場によって異なります。
工場での製作
図面から、ダクトの寸法や形状を読み取る
金属板を必要な大きさに切断する
折り曲げたり継ぎ目を加工したりして、筒状に組み立てる
端部に、ほかのダクトとつなぐための接続部を付ける
寸法と形状を確認し、現場へ送る準備をする
まっすぐな部分だけでなく、曲がる部分、枝分かれする部分、太さが変わる部分も、形に合わせて板から作ります。金属板を立体に組み立てる技術が、ダクト板金の中心です。
現場での取付
施工図と現場を照らし合わせ、取付位置を確認する
天井のコンクリートなどに、ダクトを吊るためのボルトを取り付ける
ダクトを所定の高さまで上げ、支持金物で吊る
ダクト同士をつなぎ、すき間から空気が漏れないように処理する
吹出口・吸込口や、風量を調整する部材などを取り付ける
空調機などの機器側との接続部を確認する
天井裏には、配管や電気配線も通ります。限られた空間でほかの設備と位置を調整しながら取り付けることが、現場作業の特徴です。取付後のダクトの外側に保温材を巻く作業は、保温工が担当する場合があります。
似た職種との違い
職種 | 主に扱うもの | ダクト工との関係 |
|---|---|---|
ダクト工 | 空気を通すダクトの製作・取付 | - |
冷凍空調設備工 | 空調機・冷凍冷蔵機器の据付、冷媒配管など | 空調機につながるダクトは、ダクト工が担当する場合がある |
配管工 | 水・ガス・冷媒などの配管 | 天井裏でルートが重なるため、位置の調整が必要になる |
建築板金工 | 屋根・外壁などの金属板 | 金属板を加工する点は共通。技能検定では、ダクト板金作業が「建築板金」に含まれる |
保温工(熱絶縁工) | 配管・ダクト・機器の保温保冷 | 取付後のダクトに施工する場合がある |
会社によっては、ダクトと空調機器の両方を扱うこともあります。求人の職種名だけでなく、仕事内容の欄まで読むことが大切です。空調機器側の仕事は「冷凍空調設備工の仕事内容」、配管の仕事は「配管工の仕事内容」で詳しく扱っています。
未経験者が最初に担当する仕事
未経験で入社した場合、たとえば次のような作業から始めることがあります。
材料や部材の運搬、仕分け
吊りボルトや支持金物の準備
ダクトを持ち上げるときの補助
工場での材料準備や、組立ての補助
作業後の片付け、清掃
補助作業を続けながら、図面の見方、寸法の測り方、部材の名前を覚えていきます。どの作業から任されるのか、誰に教わるのかは会社ごとに違うため、面接で確認してください。
資格・教育
ダクト工として入職するために、全員があらかじめ取得しなければならない1つの資格があるわけではありません。ただし、求人ごとに応募条件は異なり、担当する作業によっては法令で定められた教育の受講や資格が必要になります。
技能検定「建築板金(ダクト板金作業)」
厚生労働省の技能検定には、「建築板金」の中に「ダクト板金作業」があります。技能検定は技能の水準を評価する国家検定で、働き始めるための免許ではありません。受検資格は、等級のほか、実務経験、学歴、職業訓練歴などによって異なります。
作業によって必要になる教育・資格
作業 | 必要になるもの |
|---|---|
高さ2m以上で作業床の設置が困難な場所で、フルハーネス型墜落制止用器具を使用する作業(ロープ高所作業を除く) | フルハーネス特別教育 |
足場の組立て・解体・変更の作業(地上または堅固な床上での補助作業を除く) | 足場特別教育 |
アーク溶接等の業務 | 特別教育 |
研削といしの取替え、または取替え時の試運転 | 特別教育 |
作業床の高さ10m未満の高所作業車の運転 | 特別教育 |
作業床の高さ10m以上の高所作業車の運転 | 高所作業車運転技能講習 |
新たに職長等の職務に就く場合 | 事業者が行う職長教育 |
足場の上で取付作業をするだけの場合は、足場特別教育の対象とは区別されます。グラインダーなどの工具を使うこと自体も、研削といしの特別教育の対象ではありません。自分が担当する作業にどの教育が必要か、会社で受講できるかを確認してください。

安全面で知っておきたいこと
高い場所での作業:天井付近での作業では、脚立・作業台・高所作業車などを使います。高さ2m以上で墜落のおそれがある場合、事業者は場所の状況に応じて、作業床の設置や、端・開口部への囲い・手すり・覆い等の措置を行います。
金属板の切り口:切断した金属板の端でけがをしないよう、手袋などの保護具を使います。
重量物:大きなダクトは複数人で持ち上げます。
暑さ:夏場の天井裏や屋上での作業が法令上「熱中症を生ずるおそれのある作業」に該当する場合、事業者は症状を報告する体制を整え、作業からの離脱・身体の冷却・必要に応じた医師の診察等の手順を定めて周知します。
改修工事:既存建物の改修・解体では、事業者が工事前に石綿の有無を調査します。

1日の流れ(例)
寮から現場または工場へ移動する
朝礼や、その日の作業の危険を確認する打ち合わせを行う
材料・工具を準備する
午前の製作・取付作業を行う
昼休憩をとる
午後の作業を行い、進み具合を確認する
片付けと、翌日の段取りを確認する
寮へ戻る

住み込みで確認すること
ダクト工は、工場中心か現場中心かによって、寮からの通い方が変わります。
工場勤務の場合:寮から工場までの距離と移動手段
現場勤務の場合:現場が変わるたびの移動方法、遠方の現場への対応
作業着・安全靴・工具・保護具の支給・貸与・自己負担の区分
寮費、食事、入寮時の費用
入社時の移動費については「住み込みの赴任交通費」で詳しく扱っています。
求人票で確認するポイント
項目 | 見るところ | 確認したい理由 |
|---|---|---|
仕事内容 | 製作・取付・両方のどれか | 働く場所と、身につける技術が変わるため |
勤務地 | 工場の所在地、現場のエリア | 寮からの通い方が決まるため |
契約形態 | 雇用契約か、請負・業務委託か | 社会保険や給与の扱いが変わるため |
給与形態 | 日給・月給、休工日の扱い | 休工日の賃金は、給与形態や就業規則・賃金規定等によって異なるため |
教育 | 特別教育などの受講機会と費用負担 | 担当できる作業の範囲に関わるため |
資格取得支援 | 技能検定の受検費用や講習の支援 | 経験を積んだ後の目標を立てやすくするため |
寮 | 寮費、個室かどうか、工場・現場までの距離 | 毎月の手取りと生活リズムに関わるため |
面接で聞いておきたい質問
入社後は、工場と現場のどちらで働くことになりますか。
最初の数か月は、どのような作業を担当しますか。
高所作業車や足場の作業に関わる場合、特別教育などは会社で受けられますか。費用は誰が負担しますか。
雨や工程の都合で現場が休みになった日の給与は、どのような扱いになりますか。
寮から工場や現場までは、どうやって移動しますか。
工具や保護具は支給されますか。
雇用契約ですか。請負・業務委託ですか。
判断するときのポイント
ものづくり寄りの工場と、組み立てていく現場のどちらに関心があるか
天井付近など高い場所での作業に不安がある場合、最初の担当範囲が説明されているか
教育の受け方や、最初に教わる相手が具体的に説明されるか
この3つに具体的な答えがある会社ほど、入社後の働き方を想像しやすくなります。
よくある質問
Q. 図面が読めなくても応募できますか?
応募条件は求人ごとに異なります。図面の読み方を入社後に教わる前提の求人もあるため、未経験の受け入れ可否と、最初の教わり方を確認してください。
Q. 技能検定は受けなければいけませんか?
技能検定は技能水準を評価する国家検定で、ダクト工として働き始めるための法令上の必須免許ではありません。ただし、求人ごとの応募条件は異なります。会社が受検を勧めているか、費用の支援があるかも確認してください。
Q. 空調工事の会社とダクト工事の会社は違いますか?
空調設備全体を扱う会社もあれば、ダクトを専門に製作・施工する会社もあります。同じ「空調」の求人でも担当が異なるため、仕事内容の欄でダクトの製作・取付が含まれているかを確認してください。
まとめ
応募前に確認したいのは、次の3点です。
工場での製作と現場での取付の、どちらを担当するか
最初に任される作業と、作業に応じた教育の受け方
寮から工場・現場までの移動方法と、休工日の給与の扱い
この3点が分かれば、働く場所、覚えていく技術、住み込み生活の見通しを判断しやすくなります。担当範囲が曖昧なまま入社すると、思い描いていた仕事と実際の作業がずれることがあります。
判断の軸は、製作と取付のどちらから技術を身につけたいかです。どちらから始めても、ダクトの形や納まりを理解する経験につながります。
今日できるのは、気になる求人の仕事内容欄から「製作」「取付」「現場」の記載を書き出し、面接で聞く質問を1つ決めることです。
建物の中の空気の通り道は、図面と手仕事の積み重ねでできています。自分に合う入口から、その仕事を始めてみてください。

