電気工事士の仕事に興味はあっても、「資格がないと何もできないのでは」「未経験で入ったら最初に何をするのか」が分からず、応募をためらう人もいると思います。
電気工事士は、建物などの配線や照明・コンセントなど、電気設備の工事を担う仕事です。電気工事の一部は、法律で資格がなければ作業できないと定められています。そのため、入社後に「どの作業を、どの段階で担当するのか」を確認することが出発点になります。
この記事では、主な仕事内容と作業の流れ、第一種・第二種電気工事士との関係、未経験者が最初に確認したいこと、住み込みで働く場合のチェックポイントを整理します。
電気工事士はどんな仕事か
電気工事士は、建物で電気を安全に使えるように、配線や電気設備を施工する仕事です。
主な施工対象は次のとおりです。
分電盤
照明器具
コンセント
スイッチ
建物内外の電線
現場は住宅・店舗・事務所ビル・工場などで、どこを主に担当するかは会社によって異なります。仕事の種類も、次の3つに分けられます。
新築工事
既存の建物の改修工事
点検・修理などの保守
「電気工事士」は、法律に基づく資格の名前でもあり、職種の呼び名でもあります。求人票では、資格を持つ人を指しているのか、電気工事の仕事全般を指しているのかを読み分けてください。

主な仕事内容と作業の流れ
例として次のような工程があります。実際の順序や役割分担は、会社や現場によって異なります。
図面・施工内容の確認(どこに何を取り付けるか、配線経路はどうするか)
資材・工具の準備と搬入
配線経路の施工(電線を通す管や、ケーブルを支える部材を壁・天井内などに設ける)
電線を通し、接続する
照明器具・コンセント・スイッチ・分電盤などを取り付ける
絶縁抵抗や導通などを測定・確認する
片付け・報告
新築では、建物の工事の進み具合に合わせて何度か現場に入ります。まず壁や天井がふさがる前に配線を行い、内装が仕上がった後に器具を取り付ける、という流れです。
改修工事では、既存の配線を確認しながら撤去・交換を進めます。建物を使いながらの工事になる場合もあります。
施工管理・配管工との違い
職種 | 中心となる役割 |
|---|---|
電気工事士 | 電気設備の配線・器具取付などの施工 |
電気工事の施工管理 | 工程・品質・安全・原価などの管理を中心に担当する |
配管工 | 給排水・空調・ガスなどの配管の施工 |
電気工事でも、電線を通すための管(電線管)を施工することがあります。求人票の「配管」が、電気の配線経路の配管を指すのか、水や空気を流す配管を指すのかは、仕事内容の説明で確認してください。
未経験者は最初に何をするか
資格を持たずに入社した場合、担当できるのは、法律上資格が必要とされる作業以外の範囲です。
資材の運搬
工具・材料の準備
現場の清掃・片付け
資格者の作業の補助
なお、補助としてどこまで手を動かしてよいかは、法令で決められている作業の範囲に関わります。会社ごとの判断で自由に決められるものではありません。
面接では、次の2点を聞いておくと入社後の姿を想像しやすくなります。
入社後、最初にどの作業を担当するか
資格が必要な作業にはいつから関わる想定か
資格は必要か
電気工事を行う会社へ未経験で入社する段階で、全員があらかじめ電気工事士免状を取得していなければならないわけではありません。ただし、電気工事士法で資格が必要とされる作業は、必要な資格を持つ人でなければ行えません。求人ごとの応募条件も異なります。資格がなければ行えない作業が法律で定められている点が、ほかの技能職と大きく異なります。
資格 | 作業できる主な範囲 |
|---|---|
第二種電気工事士 | 一般用電気工作物等に係る電気工事 |
第一種電気工事士 | 一般用電気工作物等に加え、最大電力500kW未満の自家用電気工作物に係る電気工事(自家用電気工作物に係る特殊電気工事を除く) |
ネオン工事や非常用予備発電装置工事などの特殊電気工事には、別に特種電気工事資格者の制度があります。
電気工事士の資格について押さえておきたい点は次のとおりです。
資格が不要な作業もある:法令で定められた軽微な作業は、資格がなくても行えます。どの作業がこれに当たるかは、法令で細かく決められています。
第一種は免状の交付に実務経験が必要:第一種電気工事士試験の合格者が免状交付を受けるには、原則として電気工事に関する3年以上の実務経験が必要です。
感電のおそれがある作業には特別教育がある:低圧の充電電路の敷設や修理などの業務に就く場合、事業者が特別教育を行います。
電気工事施工管理技士は別の資格:施工管理を担うための国家資格で、電気工事士になるための免許ではありません。
受験費用や講習費用を会社が負担するかは、会社によって異なります。求人票の「資格取得支援」の中身を確認してください。
安全面で確認したいこと
電気工事では、次の点を知っておきたいところです。
感電への対策:停電させて作業するか、検電の手順はどうか、絶縁用の保護具を使うか
高い場所での作業:天井や高い場所の作業では、脚立・足場・高所作業車などを使います。高所作業車は、作業床の高さによって、必要な教育が特別教育か技能講習かが分かれます。
フルハーネス型墜落制止用器具の特別教育:対象は「高さ2m以上で作業床の設置が困難な場所でフルハーネス型墜落制止用器具を使用する作業(ロープ高所作業を除く)」です。高所作業のすべてに必要なわけではありません。
改修工事での石綿:改修工事では、事業者が工事前に石綿の有無を調査します(石綿則3条)。
面接では「安全教育を入社後いつ、どのように受けるか」を聞いておくと安心です。
1日の流れ
集合・現場へ移動
朝礼、その日の作業と危険箇所の確認
午前の作業(配線・取付・補助)
昼休憩
午後の作業、測定・確認
片付け、翌日の段取り確認
帰宅
始業・終業の時刻や、現場までの移動時間の扱いは、会社や現場によって異なります。
働く前に知っておきたいこと
扱う現場が変わる:工事の進み具合に合わせて、複数の現場を行き来する場合があります。
狭い場所や足元の悪い場所での作業がある:天井裏・床下・脚立の上などで作業する場面があります。
最初に覚えることがある:図面の記号、材料や工具の名前を覚えるところから始まります。
天候・工程による休みの賃金:休みになった日の賃金の扱いは、給与形態や就業規則・賃金規定等によって異なります。
契約形態:雇用契約か、請負・業務委託かを確認してください。
住み込みで確認すること
寮から現場までの移動手段と所要時間(送迎・社用車・公共交通機関など)
遠方の現場の場合、出張や宿泊の扱い
工具・作業服・安全帯などが支給か、自己負担か
資格試験の受験日に休めるか、受験費用の負担はどうなるか
入寮までの移動費がどうなるか(詳しくは住み込みの赴任交通費で整理しています)
求人票で確認するポイント
項目 | 見るところ |
|---|---|
工事の種類 | 新築・改修・保守のどれか |
主な現場 | 住宅・店舗・ビル・工場など |
応募条件 | 資格が必須か、入社後の取得でよいか |
資格取得支援 | 受験料・講習費の負担の有無と条件 |
工具・装備 | 支給・貸与・自己負担のどれか |
契約形態 | 雇用契約か、請負・業務委託か |
給与形態 | 日給・月給など、休工日の扱い |
寮・通勤 | 寮費、個室か、現場までの移動方法 |
面接で聞いておきたい質問
入社後、最初にどの作業を担当しますか。
資格が必要な作業には、どの段階から関わる想定ですか。
第二種電気工事士の取得を求めていますか。取得費用の負担はありますか。
主な現場は住宅・ビル・工場のどれですか。
寮から現場まではどのように移動しますか。
工具や作業服は支給されますか。
雇用契約ですか、請負・業務委託ですか。
判断するときのポイント
資格が必要な作業と、補助作業の線引きを具体的に説明してくれるか
資格取得までの道筋(時期・費用・受験日の扱い)が分かるか
主な現場の種類が、自分の希望と合っているか
寮・通勤・装備の負担を含めて、生活の見通しが立つか
よくある質問
Q. 資格がなくても応募できますか?
A. 求人によります。「資格不問」の求人でも、法律上資格が必要な作業は資格取得後に担当します。応募前に、入社後の担当範囲を確認してください。
Q. 第一種と第二種、どちらから取るべきですか?
A. 担当する工事の範囲によって必要な資格が変わります。会社がどちらを求めているかを確認して決めてください。
Q. 電気工事士と電気主任技術者は何が違いますか?
A. 電気主任技術者は、電気事業法に基づき、電気設備の保安の監督を担う資格です。電気工事士は、電気工事の作業を行うための資格で、役割が異なります。
Q. 高い場所が苦手でも働けますか?
A. 現場や工事内容によって、高い場所での作業の頻度は異なります。主な現場と作業内容を面接で聞いてから判断してください。
まとめ
最初にやることは、資格の勉強を始めることではありません。応募先で「入社後に担当する作業」「資格が必要な作業に関わる時期」「主な現場の種類」の3点を確認することです。
この3点が分かれば、次のことを判断できます。
無資格のまま入社して、どこから始められるか
資格を取るまでの期間と費用の見通し
自分が働きたい現場かどうか
住み込みの生活と両立できるか
ここが曖昧なまま入社すると、思っていた仕事との違いに後から気づきやすくなります。
判断の軸は、資格が必要な作業と補助作業の線引きを、会社が具体的に説明できるかどうかです。説明が具体的であれば、入社後の毎日と資格取得までの道のりを、事前に想像しやすくなります。
今日できるのは、気になる求人の仕事内容欄を読み、「新築か改修か」「資格は必須か」を書き出すことです。
電気の仕事は、覚えたことが一つずつ形に残る仕事です。最初の確認が、その一歩を確かなものにしてくれます。

