「型枠大工」という求人を見て、家を建てる大工とどう違うのか、型枠とは何なのか、未経験や無資格でも応募できるのかと迷っていませんか。
型枠大工は、木造住宅を建てる大工とは仕事内容が異なります。コンクリートは固まる前は流れる状態なので、柱や壁、梁(はり)、床を設計どおりの形にするには、流し込むための枠が必要です。その「型枠」を加工し、組み立て、位置や水平・垂直を調整するのが型枠大工の仕事です。
未経験・見習いから募集する求人もあり、入職の時点で特定の資格が求められるとは限りません。 この記事では、型枠工事の流れ、型枠解体工との違い、未経験者が最初に担当する作業、資格と安全面、求人票と面接で確認することを整理します。
型枠大工とはどんな仕事か
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、型枠大工は、鉄筋コンクリートの鋳型の役割を果たす型枠を作り、工事現場で組み立てる職業として紹介されています。
型枠を使うのはビルやマンションだけではありません。job tagでは、新幹線、橋、トンネル、地下鉄など、コンクリートを使う土木工事にも型枠が必要だと説明されています。建築の現場で働く会社もあれば、土木の現場が中心の会社もあります。
型枠工事は、次のような工程で進みます。
図面の確認と加工図の作成
型枠材の加工
墨出し
建込み・組立て
水平・垂直などの確認
コンクリート打設時の確認
型枠の取り外し・搬出
どの工程を担当するかは、会社や現場の規模によって異なります。

型枠工事の主な流れ
図面の確認・加工図
施工図を読み、柱・梁・壁・床などに必要な型枠の形や寸法を確認します。必要な部材の形や数を図面から拾い出し、加工のための図面(加工図)にまとめる工程があります。加工図の作成を誰が担当するかは、会社や現場によって異なります。未経験で入職した場合は、熟練者の指導のもとで測量、墨出し、加工、組立てなどを見習いながら仕事を覚える例があります。
型枠材の加工
加工図に従って、合板(コンパネ)や桟木(さんぎ:補強に使う角材)などを必要な形・寸法に切り、型枠のパネルを作ります。のこぎりやかなづちなどの手工具のほか、電動工具も使います。
墨出し
型枠を設置する位置を決めて、床などに印を付けます。型枠を正しい位置に組み立てるための基準になる工程です。
建込み・組立て
加工したパネルを現場で所定の位置に立てていく作業を「建込み(たてこみ)」と呼びます。job tagでは、鉄筋工が組み立てた柱の鉄筋の周りをパネルで囲み、壁の内側を立て、柱の上に梁を架け、床(スラブ)をつなぎ、壁の外側を立てるという順番が例として紹介されています。パネルは締付金物や金属製のパイプなどで固定し、倒れないようサポート(支柱)なども使って支えます。
水平・垂直などの確認
組み立てた型枠の位置や、水平・垂直を確認・調整します。型枠の形がそのままコンクリートの形になるため、図面どおりに組み上がっているかを確かめる工程です。確認のあと、型枠の検査を受けて完成となります。
コンクリート打設時の確認
コンクリートを流し込む(打設する)際に、型枠が崩れたり、ふくらんだりしないよう監視する役割があります。この立ち会いを「合番(あいばん)」と呼ぶこともあります。コンクリートの流し込みそのものを誰が担当するかは、職種や会社、現場によって分担が異なります。
型枠の取り外し・搬出
コンクリートが固まったあと、型枠を取り外し、材料を整理して搬出します。この工程を型枠大工が行う現場もあれば、専門の作業員が担当する現場もあります。
型枠大工と型枠解体工の違い
型枠大工 | 型枠解体工 | |
|---|---|---|
主な担当 | 型枠の加工・墨出し・組立て・調整 | コンクリートが固まった後の型枠の取り外し |
使うもの | 図面、合板、桟木、金物、工具 | 解体用の工具、材料の整理・搬出 |
job tagでは、型枠の取り外しについて、大規模な工事では型枠解体を専門に行う型枠解体工が担当することもあり、小さな工事では型枠大工が行うと説明されています。会社によって、組立てと解体を同じ人が担当する場合も、分業する場合もあります。
なお「型枠解体」は、コンクリートが固まった後に型枠を取り外す工程です。建物や構造物そのものを取り壊す解体工事とは別の仕事です。求人票に「型枠解体」とある場合は、どちらの仕事を指しているかを確認してください。
未経験者は最初に何をするか
job tagでは、型枠大工は入職にあたって特に学歴や資格は必要とされず、見習いとして働きながら技能を身につける例が紹介されています。入職当初は、熟練工の指導のもとで測量、墨出し、加工、組立てなどを見習う流れです。
会社によっては、次のような作業から経験を積みます。
道具や材料の名前を覚える
資材や型枠材の準備・運搬
加工の補助
組立て作業の補助
現場の整理・片付け
現場の安全ルールや合図を覚える
どのくらいの期間で加工や組立てを任されるかは、会社や本人の習得状況によって違います。入社前に「最初に担当する作業」と「図面や墨出しはどの段階から覚えるか」を聞いておくと、入社後の見通しを立てやすくなります。
型枠大工に資格は必要か
型枠大工として入職するために、全員があらかじめ取得しなければならない1つの資格があるわけではありません。 ただし、担当する業務や立場によって、関係する資格や教育があります。
型枠施工技能士
国家検定である技能検定には「型枠施工(型枠工事作業)」の職種があり、合格すると「型枠施工技能士」と名乗れます。技能検定は技能の水準を評価する制度で、型枠大工として働き始めるための免許ではありません。job tagでは、一定の実務経験を積むことで受検資格を得られると説明されています。
型枠支保工の組立て等作業主任者
型枠支保工(かたわくしほこう)とは、スラブや梁などのコンクリートを打設する型枠を、下から支柱などで支える仮設の設備です。法令では、型枠支保工の組立てや解体の作業を行うとき、事業者は技能講習を修了した人の中から作業主任者を選任し、作業を指揮させることになっています。型枠支保工の組立て・解体作業では、事業者が技能講習修了者の中から作業主任者を選任します。型枠大工として働く人全員が、入職時にこの技能講習を修了している必要があるという意味ではありません。
その他の教育・資格
担当する場合に限って、次のような教育・資格が関係します。
担当する作業の例 | 関係する教育・資格の例 |
|---|---|
クレーン等でつる荷を掛け外しする | つり上げ荷重に応じた玉掛け技能講習・特別教育 |
移動式クレーンを運転する | つり上げ荷重に応じた運転免許・技能講習・特別教育 |
フォークリフトで資材を運ぶ | 最大荷重1トン以上は技能講習、1トン未満は特別教育 |
高さ2メートル以上で作業床を設けることが困難な場所で、フルハーネス型墜落制止用器具を使って行う作業(ロープ高所作業を除く) | フルハーネス型墜落制止用器具の特別教育 |
どれが必要になるかは、会社での担当によって変わります。機械の資格の区分は「重機オペレーターの仕事内容」でも整理しています。
型枠大工の安全面で確認したいこと
作業開始前の打ち合わせ:その日の作業範囲、手順、担当を確認する
型枠材・工具の状態確認:合板や金物、電動工具に傷みがないか確認する
型枠の固定状態:締付金物やサポートの取り付けを確認する
水平・垂直などの確認:組み上がった型枠の精度を確認する
コンクリート打設時の型枠の状態確認:打設中に型枠の変形などがないか見る
高い場所で作業する場合:足場や墜落防止の措置を確認する
資材を上げ下ろしする場合:つり荷の下に入らない、合図を決めるなどの措置を確認する
他の職種との作業範囲:鉄筋工など同じ現場で働く職種と、作業範囲や合図を確認する
作業後の整理:材料や工具を片付け、つまずきや落下を防ぐ
型枠支保工については、法令上、組立図を作成してその図に基づいて組み立てることが定められています。また、コンクリート打設作業では、その日の作業開始前に型枠支保工を点検し、作業中に異常が認められた場合に作業を中止できるよう、あらかじめ措置を講じることが事業者に求められています。
型枠大工の1日の流れ
時間は会社・現場で異なるため、ここでは順番で紹介します。
現場へ移動:寮や会社から現場へ向かう
朝礼・打ち合わせ:作業内容と安全確認
型枠材・工具の準備
墨出し・建込みなど
休憩・昼食
組立て・調整
施工状態の確認
材料・工具の片付け
作業終了・報告
同じ現場でも、工程によって「加工の日」「組立ての日」「打設に立ち会う日」「取り外し・搬出の日」と、担当する作業が変わる場合があります。
働く前に知っておきたいこと
建築と土木の両方の現場がある:ビルやマンションのほか、橋や道路などの土木構造物もある
屋外で作業する現場がある:天候によって工程が変わる場合がある
材料や工具を扱う:合板や金物を運び、手工具・電動工具で加工する
高い場所で作業する場合がある:job tagでは、仕事の内容によって高所作業もあるが、下ごしらえなど地上の仕事もあるとされている
他の職種と同じ現場で作業する:鉄筋工やコンクリートの打設を担当する人たちと工程をつないで進める
工程によって担当作業が変わる
現場が変わる会社がある:工事が終わると別の現場へ移る
型枠大工は、図面を読み取り、位置や水平・垂直を確認しながら組み立てる、正確さが必要な仕事でもあります。
住み込みで確認すること
仕事内容を理解したうえで、住み込みならではの確認点を押さえます。
寮から現場までの移動:送迎や社用車の有無、出発時刻。詳しくは「住み込みの寮から現場までどう通う?」で整理しています
現場が変わったときの移動:現場ごとに移動時間が変わる
出張の有無と費用:出張中の宿泊費・交通費の扱い
出張中の寮費:寮を空けている間も寮費がかかるか
作業着・工具・保護具の費用:支給か自己負担か。工具を自分で用意する必要があるか
資格・技能講習の費用と講習日の賃金:会社負担か、受講日の給料はどうなるか
雨天などで作業が変わった日の賃金:給与形態や会社の就業規則・賃金規定などによって扱いが異なるため、寮費・食費を差し引いた手取りとあわせて確認する
入寮前の移動費:赴任時の交通費は「住み込みの赴任交通費は自己負担?」を確認してください
求人票で確認するポイント
確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
建築・土木 | どちらの現場が中心か |
担当工程 | 加工から組立てまで担当するか |
型枠解体 | 自社で行うか、別の職人・会社が担当するか |
未経験可否 | 未経験・見習い可か |
最初に担当する作業 | 補助作業の内容が書かれているか |
応募時の資格 | 資格の具体名があるか |
入社後の資格・教育 | どの講習・教育を、いつ受けるか |
資格取得費用 | 会社負担か、受講日の賃金 |
工具・作業着等の費用 | 支給か自己負担か |
現場範囲 | どの地域の現場が中心か |
出張 | 有無、期間、費用の扱い |
寮から現場への移動 | 送迎、社用車、公共交通機関 |
給与形態・手当 | 月給・日給月給、手当の有無 |
面接で聞いておきたい質問
そのまま使える質問文です。
「建築と土木では、どちらの型枠工事が多いですか」
「型枠の加工から組立て、解体までのうち、どこを担当しますか」
「型枠解体は別の会社・職人が担当しますか」
「未経験で入社した場合、最初はどの作業から始めますか」
「図面や墨出しは、どの段階から覚えますか」
「応募時に必要な資格はありますか」
「入社後に受ける技能講習や特別教育を教えてください」
「資格取得費用は会社負担ですか」
「工具は支給されますか。自分で用意するものはありますか」
「現場はどの地域が中心ですか」
「寮から現場へはどのように移動しますか」
寮そのものの質問は「住み込み求人の面接で寮について何を聞く?」にまとめています。
判断するときのポイント
型枠工事のどの工程を担当するか:工程が分かると、入社後の仕事の中身を想像しやすくなります
型枠解体まで行うか:組立てと解体のどちらが中心かで、働き方が変わります
未経験者の最初の仕事と教育が具体的か:仕事を覚える順番を事前に想像しやすくなります
資格・現場範囲・移動方法が確認できるか:入社前後の費用と通勤の負担を見通せます
よくある質問
普通の大工と型枠大工は何が違いますか?
木造住宅を建てる大工は、木材を組んで建物そのものを作ります。型枠大工は、コンクリートの柱や壁、床の形を作るための型枠を組み立てる仕事です。コンクリートが固まると型枠は取り外されるため、完成した建物に型枠は残りません。
型枠大工と型枠解体工は何が違いますか?
型枠大工は型枠の加工・組立てを中心に、型枠解体工はコンクリートが固まった後の型枠の取り外しを担当します。大規模な工事では分業し、小規模な工事では型枠大工が取り外しまで行う場合があります。建物を取り壊す解体工事とは別の仕事です。
未経験でも型枠大工になれますか?
未経験・見習いを募集している求人があります。会社によっては、資材の運搬や加工・組立ての補助から始め、墨出しや図面の読み方を覚えていく流れになります。応募前に、最初の作業と教育の方法を確認してください。
型枠施工技能士がないと働けませんか?
型枠施工技能士は技能の水準を評価する国家検定で、型枠大工として働き始めるための免許ではありません。実務経験を積んでから受検する資格です。応募時に必要な資格は、求人票で確認してください。
まとめ
最初にやることは、資格の勉強を始めることではありません。求人票で「担当工程」「型枠解体の担当」「未経験者の最初の仕事」の3点を確認することです。
この3点が分かれば、次のことを判断できます。
入社後に担当する作業の中身
仕事を覚えていく順番
必要になる教育・資格
現場や寮からの移動を含めた働き方
これが曖昧なまま応募すると、入社後に任される作業との違いに戸惑いやすくなります。
判断の軸は、担当する工程と未経験者の育て方を、応募前に想像できるかどうかです。説明が具体的であれば、入社後の働き方を事前に思い描きやすくなります。
今日できるのは、気になる求人を1件選び、「担当工程」「型枠解体の有無」「最初の仕事」を書き出すことです。書かれていない項目が、面接で聞く質問になります。
型枠が組み上がるように、仕事の中身が一つずつ分かれば、新しい一歩の形もはっきりしてきます。

