軽天工は、軽量鉄骨の部材を使って、天井や間仕切り壁の骨組み(下地)を組む仕事です。石こうボードなどを張る前の段階を担い、天井の高さや壁の位置は、この下地の精度で決まります。この記事では、天井と壁それぞれの施工の流れ、ボード工・内装工との違い、未経験者が最初に担当する作業、技能検定「内装仕上げ施工」の鋼製下地工事作業、応募前に確認することを整理します。
軽天工とはどんな仕事か
「軽天」は、軽量鉄骨天井下地を略した呼び方です。実際には天井だけでなく、間仕切り壁の下地も軽天工が組む現場があります。現場ではLGSと呼ばれることもあります。
ビル、商業施設、病院、学校、マンションなどでは、コンクリートの躯体の内側に軽量鉄骨で下地を組み、その上にボードを張って天井や壁をつくる工法が採られることがあります。軽天工は、この骨組みを図面どおりの位置と高さに組み上げる役割です。
厚生労働省の技能検定に関する資料では、鋼製下地工事で使う部材として、天井では鋼製野縁、野縁受け、吊りボルト、壁ではスタッド、ランナー、スペーサーなどが挙げられています。
軽天工事の作業の流れ
例として次のような工程があります。実際の順序や役割分担は、会社や現場によって異なります。
天井下地の例
図面の確認・割付け:天井の高さ、照明や点検口、設備機器の位置を図面で確認し、部材の配置を決めます。
墨出し:基準となる高さや位置を床・壁に印します。現場によっては、墨出しを専門の職種が担当します。
吊りボルトの取付け:躯体に設けられた金物などに吊りボルトを取り付けます。
野縁受けの取付け:吊りボルトの先にハンガーを付け、野縁受けを通します。
野縁の取付け:野縁受けに野縁を留め付け、ボードを張る面をつくります。
高さの調整・補強:天井面が水平になるよう調整し、照明や点検口などの開口部まわりに補強を入れます。

壁下地の例
ランナーの取付け:床と天井側に、壁の位置に沿ってランナーを固定します。
スタッドの建込み:ランナーにスタッドを差し込み、所定の間隔で立てます。
振れ止め・スペーサーの取付け:スタッドが揺れたりねじれたりしないよう部材を入れます。
開口部の補強:ドアや窓などの開口部まわりに補強材を入れます。

どちらも最後に、ゆがみや固定漏れがないかを点検し、必要があれば補修してから、ボードを張る工程へ引き渡します。部材の切断はカッターなどの電動工具で行い、留め付けにはビスを使います。補強部分などで溶接を使う現場もあります。

似た職種との違い
職種 | 担当する範囲 | 主な作業 |
|---|---|---|
軽天工(本記事) | 天井・壁の軽量鉄骨下地 | 吊りボルト、野縁、スタッドなどの取付け・調整 |
ボード工 | 下地の上の面材 | 石こうボードなどの割付け・切断・張付け |
内装工 | 内装仕上げ全体 | 床・壁・天井の仕上げ材の施工 |
墨出し工 | 施工の基準 | 基準線・高さの印を出す |
建築大工 | 木造の構造・木下地 | 木材による骨組みや下地、造作 |
軽天工はボードを張る前の骨組みを、ボード工はその上に面材を張る工程を担当します。ただし、会社によっては「軽天・ボード」として同じ職人が両方を一貫して担当する場合があります。求人票に「軽天」とだけあるのか、「軽天・ボード」とあるのかを確認してください。
未経験者が最初に担当する仕事
部材の搬入・荷揚げと、作業場所への配置

部材の仕分け、数量の確認
図面の寸法に合わせた部材の切断の補助
先輩が組む部材を支える、ビスや工具を渡す
端材の片付け、清掃
慣れてきたら、壁のランナー・スタッドの取付けや、天井の野縁の留め付けなどへ担当を広げていきます。割付けや墨出し、高さの調整は経験を積んでから任されることが考えられます。進め方は会社によって異なります。
資格・教育
軽天工として入職するために、全員があらかじめ取得しなければならない1つの資格があるわけではありません。ただし、求人ごとに応募条件は異なり、担当する作業によっては法令で定められた教育の受講や資格が必要になります。
国の技能検定には「軽天技能士」という独立した職種はありません。技能検定「内装仕上げ施工」の中に、作業の区分として「鋼製下地工事作業」があります。ボードを張る工程は、同じ職種の「ボード仕上げ工事作業」という別の区分です。
資格・教育 | 内容 | 関係する場面 |
|---|---|---|
技能検定「内装仕上げ施工」(鋼製下地工事作業) | 鋼製下地の技能の水準を評価する国家検定。働き始めるための免許ではない | 経験を積んだあと、技能の証明として |
アーク溶接等の業務に係る特別教育 | アーク溶接等の業務に就く人が対象 | 補強などで溶接を使う場合 |
足場の組立て等の特別教育 | 足場の組立て・解体・変更の作業に係る業務が対象(地上または堅固な床上での補助作業を除く) | 足場の組立て・解体も担当する場合 |
高所作業車(作業床の高さ10m未満) | 特別教育 | 天井の高い空間で高所作業車を運転する場合 |
高所作業車(作業床の高さ10m以上) | 高所作業車運転技能講習 | 同上 |
研削といしの取替え等の特別教育 | 研削といしの取替え、または取替え時の試運転の業務が対象。工具を使うこと自体は対象外 | といしの取替えを行う場合 |
職長教育 | 新たに職長等の職務に就く人に対して、事業者が行う教育 | 現場で作業員を指揮する立場になる場合 |
技能検定の受検資格は、等級のほか、実務経験、学歴、職業訓練歴などによって異なります。
安全面で気をつけること
脚立・作業台からの転落:天井下地は、脚立や可搬式の作業台、移動式の足場の上での作業になります。高さ2m以上で墜落のおそれがある場合は、場所の状況に応じて作業床の設置や、端・開口部への囲い・手すり・覆い等の措置がとられます。
切断時のけが:鋼材の切り口は鋭くなります。切断時の火花や切り粉、切り口での切り傷に備え、保護眼鏡や手袋を使います。
上を向いた作業:天井作業は上を見上げる姿勢が続くため、首や肩に負担がかかります。
溶接:溶接を使う場合、金属アーク溶接等で発生する溶接ヒュームは特定化学物質障害予防規則の対象で、事業者には換気や呼吸用保護具の使用などの措置が求められます。
1日の流れ
事務所や寮に集合し、現場へ移動する
朝礼、危険予知活動、その日の施工範囲の確認
部材の荷揚げ・配置
天井または壁の下地の施工
休憩
施工の続き、点検
端材の片付け、清掃、翌日の段取り
屋内作業が中心のため、建物の外まわりの工事に比べると雨の影響は受けにくい仕事です。ただし、現場の工程によって作業日が変わることはあります。
住み込みで確認すること
現場の範囲と期間:大型の建物では同じ現場に長く通うことがあります。寮から通える範囲か、現場が変わるたびに移動があるかを確認します。
寮から現場への移動:社用車での乗り合いか、公共交通機関か。
工具の扱い:電動工具やインパクトドライバーなどを会社が貸与するか、自分で揃えるか。
入社時の移動費:寮へ入るまでの交通費の扱いは住み込みの赴任交通費で確認方法をまとめています。
求人票で確認するポイント
項目 | 見るところ | 確認したい理由 |
|---|---|---|
担当範囲 | 「軽天」のみか、「軽天・ボード」か | 覚える作業と現場での役割が変わるため |
建物の種類 | ビル、商業施設、マンション、店舗改装など | 天井の高さや工期、現場の場所が変わるため |
新築か改修か | 新築工事、テナント入れ替えの改装など | 夜間作業や短期の現場の有無に関わるため |
給与形態 | 月給、日給月給、日給、出来高など | 工程で作業日が変わったときの収入に関わるため |
工具 | 貸与か自己負担か | 入社時の出費に関わるため |
契約形態 | 雇用契約か、請負・業務委託か | 社会保険や給与の扱いが変わるため |
寮 | 寮費、個室か、現場までの距離 | 毎月の手取りと通勤の負担に関わるため |
面接で聞いておきたい質問
「担当するのは軽天の下地だけですか。ボード張りも行いますか」
「ビルや商業施設など、どのような建物の現場が中心ですか」
「店舗の改装などで、夜間の作業はありますか」
「入社後、最初はどの作業から担当しますか。壁と天井、どちらから覚えることが考えられますか」
「電動工具は会社から貸与されますか」
「高所作業車や足場の組立てなど、業務に必要な教育は会社で受講できますか」
判断するときのポイント
軽天だけか、ボードまで一貫して担当するかを理解したうえで応募できるか
夜間作業や現場の期間が、住み込みの生活と両立できるか
工具などの入社時の負担を含めて、最初の月のお金の見通しが立つか
よくある質問
Q. 軽天とボードはどちらを先に覚えますか?
会社によって異なります。軽天だけを専門にする会社もあれば、軽天とボードを同じ職人が担当する会社もあります。面接で最初に担当する作業を確認してください。
Q. 鋼製下地の技能検定を受けないと働けませんか?
技能検定「内装仕上げ施工」(鋼製下地工事作業)は、軽天工として働き始めるための法令上の必須免許ではありません。ただし、求人ごとの応募条件は異なります。
Q. 大工の経験は役に立ちますか?
木材と軽量鉄骨で部材や留め方は異なりますが、図面を読んで位置と高さを出す考え方は共通する部分があります。どこまで経験として評価されるかは、会社ごとに確認してください。
まとめ
応募前に確認したいのは、次の3点です。
担当範囲が「軽天」のみか、「軽天・ボード」か
現場となる建物の種類と、夜間作業の有無
工具の貸与や、業務に必要な教育の受講体制
この3点が分かれば、入社後の仕事の範囲と、住み込みでの生活の組み立て方を判断しやすくなります。
ここが曖昧なまま入社すると、想定していなかったボード張りや夜間の現場に戸惑うことがあります。
判断の軸は、天井と壁の骨組みをつくる工程を、どこまで自分の担当として引き受けるかです。担当範囲が分かれば、必要な教育や工具も見えてきます。
今日できるのは、気になる求人の仕事内容に「軽天」「ボード」「LGS」のどれが書かれているかを確認することです。
完成すると見えなくなる骨組みが、天井や壁のまっすぐな仕上がりを支えています。求人票の一語を確かめるところから、準備を進めてみてください。

