「製缶工」という名前から、缶詰や飲料の缶を作る仕事を思い浮かべる人もいるかもしれません。この記事で扱う製缶工は、鉄やステンレスなどの鋼材を切る・曲げる・組み立てる・溶接するといった工程を重ねて、タンクや架台、構造物などを形にする仕事です。溶接工と担当範囲が重なる職場もあり、関係する資格も担当する工程によって変わります。この記事では、製缶の工程、溶接工など近い職種との違い、工程ごとに関係する資格、求人票で確かめる点を整理します。
製缶工は何を作る仕事?
厚生労働省の紹介では、製缶工は鉄やステンレスの鋼材をさまざまな技術で加工し、タンクや鉄骨構造物などを形にする仕事で、環境設備、貯槽、プラント、産業機械など幅広い分野で必要とされていると説明されています。
作るものの例としては、液体やガスを貯めるタンク、配管や機器を載せる架台、機械装置のフレームやカバー、プラント設備の部材などがあります。どれも、決まった形の部品を大量に作るというより、図面ごとに形や寸法が変わる製品です。厚生労働省の紹介記事に登場する製缶工も、発注される仕事は似ているようで毎回まったく違う、一品ごとの生産だと語っています。
名前に「缶」が入っていても、食品・飲料の容器を製造する仕事とは作業内容が異なります。求人名だけで判断せず、求人票の「製品」や「仕事内容」の欄で、何を作る会社かを確認してください。
鋼材が製品になるまで:製缶の工程
厚生労働省の紹介では、製缶工の仕事は原寸展開、ケガキ、溶断、穴あけ、曲げ、溶接、仕上げなど、幅広い工程にわたるとされています。
例として次のような工程があります。実際の順序や役割分担は、会社や現場によって異なります。
図面を読む:製品の形、寸法、材質、溶接の指示を確かめる
原寸展開・ケガキ:板の上に、切る線・曲げる線・穴の位置を書き込む

切断:ガスやプラズマによる溶断、機械による切断で部材を切り出す

穴あけ:ボルト穴などを加工する
曲げ・成形:板を曲げたり丸めたりして形を作る

仮組み・組立:部材を図面の位置に合わせ、仮に固定する
溶接:部材どうしを接合する
仕上げ:グラインダで整え、溶接でのひずみを直す
検査:寸法や溶接部の状態を確かめる

原寸展開とケガキ:平らな板から立体を作る準備
タンクの胴や角のあるカバーなどの立体は、平らな鋼板から作ります。そのために、完成した形を平面に開いたときの形(展開図)を求め、実物と同じ寸法で板の上に写し取る準備が原寸展開とケガキです。
ここで線が少しでもずれると、切断・曲げ・組立のすべての工程に影響し、最後に部材が合わなくなります。製缶の仕上がりは、最初に引く線で決まる部分があるといえます。
溶接工とどこが重なり、どこが違う?
溶接は、製缶の工程の一つです。そのため、製缶工と溶接工の担当範囲は職場によって重なります。製缶工が切断から溶接・仕上げまで通して担当する職場もあれば、組立までを製缶工が行い、本溶接を溶接工が担当するなど分担する職場もあります。「製缶工と溶接工はまったく別の仕事」とは言い切れず、求人ごとに担当工程を確かめる必要があります。
近い職種との関係は、次のように整理できます。
職種 | 仕事の軸 | 製缶工との関係 |
|---|---|---|
製缶工 | 鋼材を加工・組立・溶接してタンクや構造物を作る | ― |
溶接工 | 溶接で部材を接合する | 製缶の工程の一部と重なる |
鉄骨工 | 建物の柱・梁などの鉄骨を加工・組み立てる | 加工・組立の技術は近いが、作るものが建築の鉄骨 |
鍛冶工 | 建設現場などで鋼材の加工・取付けを行う | 現場での取付けが中心 |
板金工(工場板金) | 金属の板を切断・曲げて製品を作る | 技能検定では「鉄工」とは別の職種 |
技能検定では、「鉄工」の職種に、構造物鉄工作業や製缶作業などの作業が設けられています。「鉄工 製缶作業」は、実際に都道府県で検定が実施されています。一方、「工場板金(機械板金作業)」は別の職種として実施されています。また、厚生労働省の資料では、旧労働省の職業分類で「鉄工、製缶工」が同じ小分類にまとめられています。
工場の中の仕事か、現場へ出る仕事か
製缶作業は、切断機やクレーンなどの設備がある工場内で行う求人があります。一方、厚生労働省が紹介する製缶工には、現地で製品のトラブルの修復に対応する例もあります。作業場所や担当範囲は会社によって異なります。
現地作業がある求人では、出張の頻度、宿泊先、移動費の扱いが働き方を左右します。工場の近くの寮に住みながら出張もある、という働き方になることもあるため、住まいと出張の両方を確かめておきましょう。移動費の確認方法は「住み込みの赴任交通費」で整理しています。
資格:工程ごとに関係するものが違う
製缶工として入職するために、全員があらかじめ取得しなければならない1つの資格があるわけではありません。ただし、求人ごとに応募条件は異なり、担当する作業によっては法令で定められた教育の受講や資格が必要になります。
製缶の仕事では、担当する工程によって関係する資格・教育が変わります。
担当する作業 | 関係する資格・教育 |
|---|---|
アーク溶接 | アーク溶接等の業務の特別教育 |
ガスでの切断・加熱 | 可燃性ガスと酸素を使う溶接・溶断・加熱の業務は、技能講習の修了者等でなければ就けない(就業制限) |
グラインダのといしの取替え | 研削といしの取替え・試運転の業務の特別教育 |
天井クレーンなどの運転 | 固定式クレーンは、つり上げ荷重5t以上は原則として免許(5t以上の床上操作式クレーンは技能講習の修了で運転可)、5t未満は特別教育 |
玉掛け | つり上げ荷重1t以上は技能講習、1t未満は特別教育 |
フォークリフトの運転 | 最大荷重1t以上は技能講習、1t未満は特別教育 |
クレーンの区分は、使うクレーンのつり上げ荷重と操作方式によって決まります。つり上げ荷重は、吊っている荷物の重量ではなく、クレーンの構造・材料に応じて負荷できる最大の荷重です。
技能の水準を示すものとしては、技能検定「鉄工」(製缶作業)があります。技能士は、技能の水準を評価する国家検定(技能検定)で、働き始めるための免許ではありません。受検資格は、等級のほか、実務経験、学歴、職業訓練歴などによって異なります。
厚生労働省の紹介記事でも、溶接やクレーン操作・玉掛けなどの資格を取りながら、幅広い工程を手がけている製缶工が紹介されています。入社時にすべてそろえる必要があるとは限らず、担当する工程が広がるにつれて取っていく形もあります。
作業環境と安全で確かめたいこと
製缶の工場には、溶接・切断・研削・重量物の移動が同じ空間にあります。次の点は、見学や面接で確かめておくとよいでしょう。
溶接ヒューム:溶接ヒュームは特定化学物質障害予防規則の対象です。事業者には、換気や呼吸用保護具の使用などの措置が求められます。
騒音:切断やグラインダ、ハンマでの作業では大きな音が出ることがあります。厚生労働省の「騒音障害防止のためのガイドライン」(2023年改訂)に沿った対策がとられているかを確認しましょう。
クレーン作業:クレーン則では、事業者が一定の合図を定め、原則として合図を行う者を指名して、その合図に従って運転させることになっています(運転者が単独で作業する場合を除く)。特定のつり上げ方法でつり上げられた荷の下への立入禁止も定められています。
保護具:溶接面、耐熱の手袋、安全靴などの支給と、交換の考え方。
未経験から始めるときの作業の例
担当範囲は会社によって異なりますが、例として次のような作業から始めることがあります。
材料の準備と、切断した部材の仕分け
切断面や溶接部のバリ取り・グラインダでの仕上げ(といしの取替えは特別教育を受けてから)
ケガキの補助と寸法の測定
仮組みで部材を支え、位置を合わせる
完成品の寸法チェックの補助
仕上げや組立の補助で製品の形と寸法の感覚をつかみ、ケガキ、溶接へと担当を広げていく場合があります。
求人票で確認するポイント
項目 | 見るところ | 確認したい理由 |
|---|---|---|
作る製品 | タンク、架台、機械のフレーム、プラント部材など | 扱う材料の大きさや工程が変わる |
材質 | 鉄、ステンレスなど | 溶接や加工の方法が変わる |
担当する工程 | 切断から仕上げまで通しか、一部の工程か | 身につく技術の幅が変わる |
溶接の担当 | 製缶工が溶接まで行うか、溶接工が別にいるか | 溶接の経験が積めるかを知る |
作業場所 | 工場内だけか、現地作業があるか | 出張と住まいの前提が変わる |
設備と資格支援 | 使うクレーン・機械と、講習・免許の費用負担 | 入社後に取る資格と負担を知る |
住まい | 寮の有無と費用、出張時の宿泊 | 生活の拠点を決める前提になる |
契約形態 | 雇用契約か、請負・業務委託か | 社会保険や働き方の前提が変わる |
面接で聞くこと
どんな製品を作っていますか。1つの製品を作るのにどれくらいの期間がかかりますか。
入社後はどの工程から担当しますか。溶接はいつ頃から担当しますか。
使うクレーンのつり上げ荷重と、必要になる講習・免許を教えてください。費用はどうなりますか。
現地での補修や修復に行くことはありますか。その場合の宿泊と移動費はどうなりますか。
溶接ヒュームや騒音への対策として、どんな設備や保護具がありますか。
よくある質問
Q. 溶接ができないと、製缶工として働けませんか?
A. 求人によります。製缶工が溶接まで担当する職場もあれば、本溶接は溶接工が担当する職場もあります。応募条件として溶接の経験や資格を求めているか、入社後に教育を受けて担当するのかを、求人票と面接で確認してください。
Q. 板金工と製缶工は同じ仕事ですか?
A. 技能検定では、「鉄工」(製缶作業など)と「工場板金」は別の職種として実施されています。ただし、求人でどちらの名前を使うか、どんな厚さの材料を扱うかは会社によって異なるため、製品と担当工程で判断してください。
Q. 図面が読めなくても始められますか?
A. 未経験者を募集する求人では、入社後に先輩の指示のもとで作業しながら、図面の読み方を覚えていく形があります。どのような教育の仕組みがあるかは会社によって異なるため、面接で確認しておきましょう。
まとめ
製缶工の求人を比べるときは、2本の軸を持つと違いが見えてきます。
1本目の軸は、何を作るかです。大きなタンクやプラントの部材を作る会社と、機械のフレームや架台を作る会社とでは、扱う鋼材の大きさも、使うクレーンも、必要になる資格も変わります。
2本目の軸は、どこまでの工程を任されるかです。切断から溶接・仕上げまで通して担当する職場なら、1つの製品を最初から最後まで作る力がつきます。工程ごとに分担する職場なら、特定の工程を深く身につけられます。
この2本の軸で求人を並べると、自分が目指したい製缶工の姿に近い職場が選びやすくなります。
一枚の平らな鋼板が、自分の引いた線から立体になっていく。その手応えを積み重ねられるのが、製缶の仕事です。

