溶接工の求人を見て、どんな作業をするのか、資格がなくても始められるのか迷っていませんか。溶接工は、熱を利用して金属材料同士を接合する仕事です。入職時に全員が持っていなければならない1つの免許はありませんが、アーク溶接やガス溶接の業務に就く場合は、法令で定められた教育や講習の修了が必要になります。
この記事では、溶接方法ごとの違い、作業の流れ、工場と現場での働き方の違い、未経験者が最初に任される仕事、資格、住み込みで働く前に確認したい点を整理します。
溶接工はどんな仕事か
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、溶接工を「熱を利用して金属材料を接合する溶接を行う仕事」と説明しています。
溶接でつくられるものは、ビルや橋などの鉄骨構造物、タンクや容器、パイプライン、船、発電設備、自動車や鉄道車両の部品など幅があります。job tagでは、勤務先として造船、自動車、車両、重電機メーカーなどの製造業と、ビルや橋などの鉄骨構造物を建設する建設業が挙げられています。
溶接の分類
job tagでは、溶接は接合の仕方によって「融接」「圧接」「ろう接」に分けられると説明されています。
分類 | 内容 |
|---|---|
融接 | 接合する部分を熱で溶かし、溶加材(溶接棒やワイヤなど)と一体にして固める方法 |
圧接 | 接合する部分に圧力を加えて接合する方法 |
ろう接 | 接合する金属より低い温度で溶ける材料を使って接合する方法 |
このうち融接では、ガスの炎、アーク(電気の放電による熱)、電子ビーム、レーザーなどの熱が使われます。job tagでは、アークの熱を利用するアーク溶接が、融接の中で最も一般的とされています。
溶接方法の違い:手溶接・半自動溶接・自動溶接
job tagでは、溶接方法として手溶接、半自動溶接、自動溶接が挙げられています。
方法 | 作業の内容 |
|---|---|
手溶接 | 溶接棒を溶接棒ホルダにはさみ、電流・電圧を調整してアークを発生させ、溶接棒を手で動かして溶接する |
半自動溶接 | 溶接棒の代わりに、自動的に送り出されるコイル状のワイヤを溶接トーチにつないで溶接する |
自動溶接 | 自動溶接機や溶接ロボットを運転・操作し、接合や切断の工程を監視・調整する |
「アーク溶接」「ガス溶接」は熱源による呼び方で、「手溶接」「半自動溶接」「自動溶接」は作業の進め方による呼び方です。求人票に「半自動溶接」とあれば、ワイヤを使うアーク溶接を指していることがあります。どの方法を使うかは、求人票と面接で確認してください。

主な仕事内容と作業の流れ
溶接の作業は、例として次のような工程で進みます。実際の順序や役割分担は、会社や現場によって異なります。
図面・指示の確認:どの部材を、どの位置で、どの方法で接合するかを確認します。
母材の準備:接合する金属材料(母材)を所定の位置にそろえます。
溶接条件の設定:溶接電流や電圧などを、材料や溶接方法に合わせて調整します。
溶接:接合する線に沿って、溶接棒やトーチを動かして溶接します。手溶接では、溶接棒が溶けたら新しいものに取り換えます。
仕上げ:溶接部の表面に残ったかすの除去などを行います。
確認:溶接部の外観などを確認します。
作業の合間には、トーチのノズルの掃除など、機材の手入れも行います。
検査の担当範囲
job tagでは、溶接で製作した製品を検査し、溶接部の内部に欠陥がないかを調べることが説明されています。タスクには、溶接部を引っ張ったり曲げたりする破壊検査や、放射線・超音波を使った非破壊検査も挙げられています。
ただし、これらの検査を溶接工本人がどこまで担当するかは、会社によって異なります。検査を専門の担当者や外部の機関が行う場合もあるため、担当範囲は面接で確認してください。
工場で働く溶接工と、現場で働く溶接工
溶接工の働き方は、工場の中で溶接するか、建設現場などで溶接するかによって変わります。
働く場所 | 特徴 |
|---|---|
工場 | 決まった作業場で、部品や製品を溶接する。自動溶接機や溶接ロボットを扱う職場もある |
建設・土木の現場 | 建物や構造物を組み立てる場所で溶接する。job tagでは、足場の上などの狭い場所や高所で溶接する作業もあると説明されている |
同じ「溶接工」の求人でも、工場勤務か現場作業かで、1日の過ごし方、移動の有無、安全面で確認することが変わります。
鍛冶工・配管工との違い
建設現場で「鍛冶工」と呼ばれる職種も、仕事の中で溶接を行うことがあります。鍛冶工は鉄骨や鋼材の加工・組立て・取付けの中で溶接を行う職種で、溶接工は接合作業そのものを中心とする職種です。会社によって業務範囲は重なります。詳しくは「鍛冶工の仕事内容」の記事で説明しています。
配管工も、配管の接合方法として溶接を使うことがあります。配管の仕事については「配管工の仕事内容」の記事で説明しています。
未経験者は最初に何をするか
job tagでは、溶接工の入職にあたって特に学歴や資格は求められないと説明されています。公共職業訓練校などで技能を身につけてから入職する場合や、他の職業からの中途採用もあるとされています。
会社によって違いはありますが、入社直後は次のような仕事から始めることがあります。
材料や部材の運搬、作業場の準備
溶接する部材の位置合わせの補助
溶接後のかすの除去などの仕上げ作業
溶接機材やトーチの手入れ
作業後の片付けと清掃
アーク溶接やガス溶接など、法令で教育・講習等が定められている業務を担当する場合は、必要な教育・講習を受けてから業務に就きます。その後、どのように練習し、実際の製品や構造物の溶接へ進むかは、会社の育成方法によって異なります。面接で「入社後、最初にどの作業を担当するか」を聞いておくと、入社後の働き方を具体的に想像できます。
資格は必要か
溶接工として入職するために、全員があらかじめ取得しなければならない1つの資格があるわけではありません。ただし、求人ごとに応募条件は異なり、アーク溶接やガス溶接など法令上の対象業務を担当する場合は、必要な教育・講習等を修了している必要があります。
資格・教育 | 位置づけ | 関係する場面 |
|---|---|---|
アーク溶接等の特別教育 | アーク溶接機を用いた金属の溶接・溶断等の業務に就く場合に、事業者が行う教育 | アーク溶接(手溶接・半自動溶接など)を担当する場合 |
ガス溶接技能講習 | 可燃性ガスと酸素を用いて金属の溶接・溶断・加熱を行う業務に関係する技能講習 | これらのガス溶接等の業務を担当する場合 |
ガス溶接作業主任者 | 一定のガス溶接等の作業で作業主任者となるための免許 | アセチレン溶接装置やガス集合溶接装置を用いる作業で、作業主任者として選任される場合 |
業界団体が認定する溶接技能の資格 | job tagでは、関係団体が認定する資格として紹介されている。働くための一律の免許ではない | 溶接技能を証明する資格の取得を検討する場合 |
溶接管理技術者 | job tagでは、工場認定や官公庁工事の発注の際に、設計や品質管理の責任者となるために必要な資格として紹介されている | 品質管理の責任者を目指す場合 |
アーク溶接とガス溶接では、必要な教育・講習が異なります。求人に書かれた溶接方法と、入社後に受ける教育・講習、その費用を誰が負担するかを確認してください。
安全面で確認したいこと
溶接の作業では、次のような点に注意が必要です。
アーク光と火花
アーク溶接では強い光が発生し、火花も飛びます。遮光面や保護メガネ、手袋、燃えにくい作業着などの保護具を着けて作業します。周囲に燃えやすい物を置かないなど、火気の管理も必要です。
溶接ヒューム
金属アーク溶接等作業で発生する「溶接ヒューム」は、特定化学物質障害予防規則の対象です。金属アーク溶接等作業では、有効な呼吸用保護具を使用させることや、対象作業の作業主任者を選任することなどが事業者に求められています。また、この作業に常時従事する労働者には、作業場所が屋内か屋外かにかかわらず、特定化学物質に関する健康診断が必要です。
さらに、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場では、溶接ヒューム濃度の測定や、その結果に応じた呼吸用保護具の選択などが必要になります。面体を有する呼吸用保護具を使用する場合には、定期的に適切な装着を確認する措置も定められています。求人や面接では、換気設備、呼吸用保護具、安全衛生管理の方法を確認してください。
感電
溶接では電気やガスを使うため、取り扱いに注意が必要です。job tagでは、自動電撃防止装置の普及により作業環境の改善が進んでいると説明されています。
高い場所・狭い場所での作業
建設現場では、足場の上などの狭い場所や高所で溶接する作業があります。高さ2m以上で作業床を設けることが難しい場所でフルハーネス型の墜落制止用器具を使用する作業(ロープ高所作業を除く)では、特別教育の受講が必要です。
作業姿勢
job tagでは、重量物を製作し、かがみ作業や立ち作業もあると説明されています。
1日の流れ(例)
職場によって異なりますが、1日は次のように進みます。
朝礼で、その日の作業と注意点を確認する
保護具を着け、溶接機材の点検と材料の準備をする
午前の作業(部材の位置合わせ、溶接など)
昼休憩
午後の作業(溶接の続き、仕上げ、確認など)
機材の手入れと片付けをして、作業を終える
工場勤務では、決まった作業場で同じ種類の製品を溶接することがあります。工場によっては交替制勤務の場合もあるため、勤務時間の組み方を確認してください。
働く前に知っておきたいこと
勤務先によって労働条件が異なる
job tagでは、賃金や労働時間などの労働条件は勤務先の規定によると説明されています。勤務先の業種は、製造業から建設業まで幅があります。
求められる体力と集中
job tagでは、重量物の製作やかがみ作業・立ち作業があり、体力が必要とされています。また、溶接棒を動かす運棒のために、腕の器用さや視力も求められると説明されています。
工場か現場かで生活が変わる
工場勤務は働く場所が決まっていますが、現場作業では現場ごとに働く場所が変わります。どちらの働き方になるかを、応募前に確認しましょう。
住み込みで確認すること
溶接工は、工場勤務か現場作業かによって、住み込みで確認することが変わります。
寮から工場・現場までの移動
工場勤務の場合は、寮から工場までの移動手段と所要時間を確認します。現場作業の場合は、現場が変わるたびに移動手段も変わるため、送迎があるのか、社用車に乗り合わせるのか、自分で通うのかを確認してください。移動手段の確認方法は「住み込みの寮から現場までどう通う?」の記事でまとめています。
勤務時間と寮の生活
工場で交替制勤務がある場合は、寮で夜勤明けに休めるか、食事の時間がどうなるかも確認しておきます。
遠方の現場と出張
建設現場などで寮から通えない場所を担当する場合に、出張になるのか、現場近くに宿泊するのかを確認します。出張中の宿泊費・交通費を誰が負担するか、出張中も寮費がかかるかも聞いておきましょう。
保護具・作業着
遮光面、呼吸用保護具、手袋、作業着などが、会社からの支給・貸与か、自分で用意するものかを確認します。自己負担がある場合は、初月に必要なお金として見積もっておきます。
講習の費用と講習日の賃金
アーク溶接の特別教育やガス溶接技能講習などを受ける場合の受講費用の負担と、講習日の賃金の扱いを確認します。
赴任交通費
入寮までの移動費の扱いは、住み込みの赴任交通費の記事で確認方法をまとめています。
求人票で確認するポイント
項目 | 確認したい内容 |
|---|---|
働く場所 | 工場勤務か、建設現場などでの作業か |
溶接する物 | 鉄骨、部品、配管、車両、船など、何を溶接するか |
溶接方法 | アーク溶接(手溶接・半自動溶接)、ガス溶接、自動溶接など |
担当範囲 | 溶接、仕上げ、検査、自動溶接機の操作のどこまでを担当するか |
応募条件 | 未経験可か。応募時に必要な資格・教育はあるか |
資格取得支援 | 特別教育・技能講習・技能資格の費用負担、講習日の扱い |
勤務時間 | 日勤のみか、交替制勤務があるか |
勤務地・現場 | 工場の所在地、現場のエリア、出張の有無 |
移動手段 | 寮から工場・現場までの移動方法 |
保護具 | 遮光面・呼吸用保護具などの支給・貸与か、自己負担か |
寮の条件 | 寮費・光熱費・個室かどうか |
面接で聞いておきたい質問
「工場での溶接と、現場での溶接のどちらが中心ですか。何を溶接することが多いですか。」
「入社後、最初にどの作業を担当することになりますか。」
「使う溶接方法は何ですか。そのために必要な特別教育や技能講習は、いつ受け、費用はどなたが負担しますか。」
「講習を受ける日の賃金や交通費は、どのように扱われますか。」
「遮光面や呼吸用保護具、作業着は、会社から支給・貸与されますか。自分で用意するものはありますか。」
「交替制勤務はありますか。ある場合、寮での生活時間はどのようになりますか。」
「寮から工場・現場まではどのように移動しますか。遠方の現場になったときは、宿泊費や交通費はどうなりますか。」
判断するときのポイント
求人を比べるときは、次の点を見てください。
働く場所と溶接方法が説明されているか:工場か現場か、何をどの方法で溶接するかが分かるか。
育成の進め方が分かるか:最初に任される作業と、溶接を担当するまでの段階が説明されるか。
教育・講習の扱いが分かるか:必要な特別教育や技能講習の時期、費用負担、講習日の賃金が確認できるか。
住み込みと勤務の条件がつながっているか:寮から工場・現場への移動、勤務時間と寮の生活、出張時の費用負担が説明されるか。
説明が具体的であれば、入社後の働き方を事前に想像しやすくなります。
よくある質問
Q. 溶接は、資格がないと一切できませんか?
入職時に全員が必要な1つの資格はありません。ただし、アーク溶接の業務に就くには特別教育、ガス溶接等の業務に就くにはガス溶接技能講習の修了など、法令で定められた教育・講習が必要です。入社後にこれらを受ける流れになっているかを、面接で確認してください。
Q. 半自動溶接と自動溶接は、どう違いますか?
job tagでは、半自動溶接はワイヤが自動的に送り出される溶接トーチを手で動かして溶接する方法、自動溶接は自動溶接機や溶接ロボットを運転・操作して工程を監視・調整する方法と説明されています。自動溶接の職場では、設定や材料の供給、監視が仕事の中心になることがあります。
Q. 業界団体の溶接技能の資格は、入社前に取っておくべきですか?
job tagでは、関係団体が認定する溶接技能の資格が紹介されていますが、働くための一律の免許ではありません。入社後に取得を支援する制度があるかを確認するのが先です。
Q. 目が悪くても働けますか?
job tagでは、運棒のために視力がよいことも求められると説明されています。ただし、応募条件は会社によって異なります。眼鏡の使用と遮光面の併用など、不安な点は面接で相談してください。
まとめ
最初にやることは、資格を調べることでも、すぐに応募することでもありません。求人票と面接で、働く場所(工場か現場か)・使う溶接方法・最初に任される作業の3点を確かめることです。
この3点が分かれば、次のことを判断できます。
工場勤務か現場作業かという働き方が、自分に合っているか
入社後に、どの特別教育・技能講習が必要になるか
未経験から、どの順番で溶接の技能を身につけていくか
住み込みの生活と、勤務時間や移動を無理なく続けられるか
この3点が曖昧なまま入社すると、仕事内容や生活のリズムが想像と合っているかを判断しにくくなります。
判断の軸は、仕事の中身と住み込みの条件を、入社前に具体的に説明してもらえるかです。説明が具体的であれば、入社後の1日を事前に想像しやすくなります。
今日できるのは、気になる求人の仕事内容の欄から、工場か現場か、どの溶接方法を使うかが書かれているかを確かめることです。書かれていなければ、面接で聞く質問としてメモしておきましょう。
どこで、どの方法で溶接するのかが分かるだけで、新しい仕事と暮らしの見通しは具体的になります。

