家の中の引き戸や襖、障子。毎日何気なく開け閉めしているこれらは、建具工の手でつくられ、取り付けられています。「建具」という言葉は聞いたことがあっても、どんな仕事なのか具体的に分からない人もいるかもしれません。
この記事では、戸・襖・障子などの木製建具を製作し、取り付ける職人としての建具工を扱います。工場で材料を加工・組み立てて仕上げ、現場で取り付けて開け閉めを調整するのが主な仕事です。作業の流れ、サッシ工や大工との違い、資格の考え方、応募前に確認したい点を整理します。
建具とは
建具は、建物の出入口や窓、部屋の仕切りなどの開口部に取り付けて、開け閉めするものの総称です。材料によって木製、金属製などがあります。
この記事で扱う木製建具には、次のようなものがあります。
開き戸、引き戸などの室内ドア
襖、障子
収納の扉
アルミサッシや金属製のドアの施工は、この記事では扱いません。アルミ等のサッシについては「サッシ工の仕事内容」でまとめています。

建具工の仕事内容・作業の流れ
例として次のような工程があります。実際の順序や役割分担は、会社や現場によって異なります。
打合せ・採寸:取り付ける場所の寸法を現場で測り、デザインや仕様を確認します。
制作図:採寸をもとに、つくる建具の図面を描きます。
材料の切断:木材を必要な寸法に切り出します。
機械加工:かんな掛けや、部材同士を組むための溝・ほぞ(凸部)などを加工します。
組立て:加工した部材を組み合わせて、建具の形にします。
仕上げ:表面を整え、必要に応じて塗装や表面材の貼付けを行います。
金物・付属品の取付け:丁番(ちょうつがい)、戸車、取っ手、錠などを取り付けます。
検査:寸法や動きを確認します。
搬入・取付け:現場に運び、枠に取り付けます。
建付け調整:スムーズに開け閉めできるよう、すき間や傾きを調整します。
新しく製作するだけでなく、既存の建具の修理や調整を行う会社もあります。
サッシ工・建築大工との違い
職種 | 主な仕事 | 扱う主な材料 |
|---|---|---|
建具工(本記事) | 戸・襖・障子などの木製建具の製作・取付け・調整 | 木材 |
サッシ工 | 建築用サッシの取付け | アルミなど |
建築大工 | 建物の骨組みや造作の施工 | 木材 |
内装工 | 床・壁・天井の仕上げ | ボード、クロス、床材など |
建築大工が建物の枠や骨組みをつくり、建具工はその開口部に入る開け閉めする部分をつくる、という関係にあります。大工の仕事については「建築大工の仕事内容」で詳しく扱っています。

工場と現場の比率
建具工の仕事は、工場での製作と、現場での採寸・取付けに分かれます。どちらが中心かは会社によって異なります。
工場での製作が中心で、取付けは別の担当者が行う会社
製作から取付けまで一人が担当する会社
現場での取付けや修理が中心の会社
住み込みで働く場合、工場中心か現場中心かで、通勤や1日の流れが変わります。
未経験者が最初に担当する仕事
未経験の場合は、次のような作業から始める例があります。
木材の運搬、材料置き場の整理
機械加工した部材の研磨、面取り
組立ての補助
建具の搬入・取付けの手伝い
工場の清掃、木くずの片付け
機械の操作は、安全の指導を受けてから段階的に任されるのが通常の流れですが、時期や範囲は会社によって異なります。
資格・教育
建具工として入職するために、全員があらかじめ取得しなければならない1つの資格があるわけではありません。ただし、求人ごとに応募条件は異なり、担当する作業によっては法令で定められた教育の受講や資格が必要になります。
区分 | 内容 |
|---|---|
技能検定「建具製作」 | 木製建具手加工作業、木製建具機械加工作業があります。技能の水準を評価する国家検定(技能検定)で、働き始めるための免許ではありません |
研削といし | 取替え、または取替え時の試運転の業務が特別教育の対象です。工具を使うこと自体は対象ではありません |
木材加工用機械作業主任者 | 一定台数以上の木材加工用機械を持つ事業場で、事業者が選任します。入職時に全員が必要なものではありません |
技能検定に合格すると「建具製作技能士」を名乗れます。受検資格は、等級のほか、実務経験、学歴、職業訓練歴などによって異なります。

安全面で知っておきたいこと
刃物・機械:丸のこ盤、かんな盤などの木工機械を使います。安全装置の使い方や、手を刃に近づけないための治具の使い方などを教わります。
木くず・粉じん:切断や研磨で木くずや粉じんが出ます。集じん設備や防じんマスクの有無を確認しましょう。
騒音:木工機械の音が大きいため、耳栓などを使う場合があります。
重量物:大きな建具や、ガラスが入った建具を運ぶ場合は、二人で運ぶなどのルールがあります。

住み込みで確認すること
寮から工場までの距離と通勤手段
現場での取付けがある日の移動手段と移動時間の扱い
作業服の洗濯場所(木くずが付きやすいため)
寮費・光熱費が給与から差し引かれるか
求人票で確認するポイント
項目 | 見るところ | 確認したい理由 |
|---|---|---|
扱う建具 | 木製建具か、金属製も含むか | 覚える技術が変わるため |
働く場所 | 工場中心か、現場取付けが中心か | 通勤や1日の流れが変わるため |
担当範囲 | 製作のみか、取付け・修理まで含むか | 身につく技能の幅が変わるため |
教育 | 機械操作の指導、技能検定の受検支援 | 未経験から覚える道筋を知るため |
道具 | 手道具が支給か自前か | 初期費用に関わるため |
契約形態 | 雇用契約か、請負・業務委託か | 保険や給与の扱いが変わるため |
面接で聞いておきたい質問
「主に扱うのは木製建具ですか。どんな種類の建具をつくっていますか。」
「工場での製作と現場での取付けは、どのくらいの割合ですか。」
「木工機械の操作は、どのような順序で教えてもらえますか。」
「手道具は会社で用意していただけますか。」
「技能検定の受検を支援する制度はありますか。」
判断するときのポイント
建具工の求人では、工場での製作と現場での取付けのどちらに重心があるかで、仕事の手触りが変わります。じっくり加工や組立てに向き合いたい人と、完成品を現場に納めるところまで関わりたい人とでは、合う求人が違います。
よくある質問
Q. 建具製作技能士がないと建具工として働けませんか。
建具工として働き始めるための法令上の必須免許ではありません。ただし、求人ごとの応募条件は異なります。
Q. 大工の経験がなくても応募できますか。
未経験可としている求人もありますが、条件は求人ごとに異なります。応募前に求人票の応募条件を確認してください。
Q. サッシの取付けも建具工の仕事ですか。
会社によっては木製建具と合わせて扱う場合もありますが、アルミ等のサッシ施工は別の専門職として分かれていることがあります。求人票の仕事内容で扱う建具の種類を確認してください。
まとめ
応募前に確認したいのは、次の3点です。
扱う建具の種類(木製建具が中心か)
工場での製作と現場での取付けの割合
木工機械の操作をどのような順序で教わるか
この3点が分かれば、毎日どこで何をつくる仕事なのかを具体的に描きやすくなります。
扱う建具や働く場所が曖昧なままでは、思っていた仕事と違う作業が中心だったと気づくことがあります。
判断の軸は、自分がどの工程に関わり続けたいかです。製作と取付けのどちらに重心がある会社かが分かれば、自分との相性を比べやすくなります。
今日できるのは、気になる求人票の仕事内容から「製作」「取付け」「修理」のどの言葉が書かれているかを拾い出すことです。
毎日開け閉めされる一枚の戸をつくる仕事は、自分の暮らしを組み立て直す一歩にもなります。

