「ボーリング工」「地質調査スタッフ」といった求人を見て、地面に孔を掘る仕事だとは分かっても、何のために掘るのか、どんな働き方なのかは想像しにくいかもしれません。
ボーリング工は、目的に合ったボーリング機械で地下を掘り、地面の下の状態を調べたり、井戸や地熱の孔をつくったりする仕事です。調査の現場では、機長と助手の2人で作業する形もあります。
この記事では、次のことを整理します。
掘る目的による違い
仕事の1サイクル
機長と助手の役割
資格
交替制や長期出張を含む働き方
ボーリング工とは?地下を掘削するさく井工
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、この仕事は「さく井工/ボーリング工」として紹介されています。
職業別名:さく井機械運転工、試すい工、ボーリング機械運転工
職業分類:建設機械運転工
job tagによると、仕事の規模には大きな幅があります。
深度5,000mを超える石油井の掘削
足場パイプで櫓(ろ)を組み、地下10〜20mの地質調査を1人の機長(オペレーター)と1人の助手で行うもの
地熱調査で、300℃を超える地層を掘削すること
ボーリングで地面の下の何が分かる?
同じ「ボーリング」でも、掘る目的によって仕事の中身が変わります。
目的 | 掘ってすること | 仕事の特徴 |
|---|---|---|
地質調査 | 地下の土や岩の種類、硬さ、地下水の状態を調べる | 建物や道路、トンネルなどの計画・設計の前に行う。試料の採取や孔内試験を伴う |
井戸(さく井) | 地下水をくみ上げる孔をつくる | 掘った孔に管を入れて井戸として仕上げる |
温泉・地熱 | 深い地層の熱や湯を得る孔をつくる | 深い掘削になり、連続作業になることがある |
石油・ガス | 資源を採る孔をつくる | 大規模な設備とクルーで行う |
地質調査は、工事の前提になる情報をつくる仕事です。例えば労働安全衛生規則では、トンネルなどを掘る前に、地山の形状・地質・地層の状態をボーリングその他適当な方法で調査することが事業者に求められています。
job tagでは、目的によっては掘削の途中や終了後に、検層や孔内試験を行うことがあると紹介されています。孔内試験には、例えば地盤の硬さを調べる標準貫入試験があります。

準備から跡地修復までの1サイクル
例として次のような工程があります。実際の順序や役割分担は、会社や現場によって異なります。
job tagでは、仕事の流れが次のように紹介されています。
準備:仕様に合った機械類・資機材をそろえる
整地・搬入:現場を整地し、機械類を運び込む
櫓の組立て:掘削のための櫓を組む

掘削:目的の深度まで掘り進める(掘進)

検収:発注者の検収を受ける
撤収:合格後、櫓を解体し、機械を運び出す
跡地修復:現場を元の状態に戻す
ここまでで1サイクルとなります。

地質調査のように浅い孔を掘る現場では、このサイクルを短い期間で繰り返し、現場を移っていくことがあります。深い掘削では、一つの現場に長くとどまることがあります。
機長と助手は何が違う?
役割 | 主な仕事 |
|---|---|
機長(オペレーター) | ボーリング機械を操作して掘り進める。地層の変化を読み取り、掘り方を調整する。現場の作業を取り仕切る |
助手 | 資機材の準備・運搬、櫓の組立て補助、掘削中の補助作業、片付け |
job tagでは、入社後のキャリアは「助手→機長→現場責任者→主任技術者」の段階を踏むと紹介されています。ステップアップにかかる年数は仕事の内容で異なり、機長になるには数年かかるとされています。
2人で動く現場では、機長と助手の息が合うかどうかが作業の進み方を左右します。
杭打ち工・地盤改良工とは何が違う?
職種 | 地面を掘る・入れる目的 | 残るもの |
|---|---|---|
杭打ち工 | 構造物を支える杭を施工する | 地中の杭 |
地盤改良工 | 地盤そのものを改良して強くする | 改良された地盤 |
ボーリング工 | 地下の状態を調べる、井戸や地熱の孔をつくる | 調査結果(試料・記録)、または井戸などの孔 |
同じ地盤に関わる仕事でも、ボーリング工は「地下を知る」「孔をつくる」ことが目的です。杭打ち工や地盤改良工の工事は、ボーリングによる調査結果をもとに計画されることがあります。
未経験者(助手)が最初に担当する仕事
調査の種類や会社によって違いますが、助手として例えば次のような仕事を担当します。
資機材をトラックに積み込み、現場で所定の位置に並べる
足場パイプの櫓を組み立てる補助
掘り進めるのに合わせて、掘削管(ロッド)を継ぎ足す・引き上げる補助
採取した試料を深さの順に箱へ並べ、深さや状態を記録する補助
掘削に使う水の準備と、泥水の処理
撤収後の跡地の整地
試料を深さの順どおりに扱うことは、調査結果の正しさに直結します。手元の作業でも、調査の一部を担っています。
資格・教育
ボーリング工として入職するために、全員があらかじめ取得しなければならない1つの資格があるわけではありません。ただし、求人ごとに応募条件は異なり、担当する作業によっては法令で定められた教育の受講や資格が必要になります。
job tagでは、入職にあたって特に学歴や資格は必要とされないものの、普通自動車運転免許は取得しておいた方が良いと紹介されています。入社後に、仕事の内容によって取得すべき免許・資格が決まっていくとされています。
技能検定「さく井」
作業区分は、パーカッション式さく井工事作業と、ロータリー式さく井工事作業です。
技能士は、技能の水準を評価する国家検定(技能検定)です。働き始めるための免許ではありません。
受検資格は、等級のほか、実務経験、学歴、職業訓練歴などによって異なります。
地質調査技士
一般社団法人全国地質調査業協会連合会(全地連)の資格検定試験に合格して登録する資格です。
登録後は、5年ごとに更新の手続きがあります。
job tagでは、一般の調査工事で機長は地質調査技士の資格が必要な場合が多いと紹介されています。
業界団体の資格であり、法律上の必須免許ではありません。
技術士(応用理学部門)
job tagでは、主任技術者で問われる場合があると紹介されています。
機械・荷役の資格(該当する場合)
資格・教育 | 内容 |
|---|---|
車両系建設機械(基礎工事用) | 使用するボーリング機械が車両系建設機械(基礎工事用)に該当する場合。自走式で機体重量3t以上の運転は技能講習、3t未満の運転は特別教育 |
巻上げ機の運転の業務 | 特別教育(使用する機械が該当する場合) |
玉掛け | つり上げ荷重1t以上は技能講習、1t未満は特別教育 |
移動式クレーンの運転 | 1t未満は特別教育、1t以上5t未満は小型移動式クレーン運転技能講習、5t以上は移動式クレーン運転士免許 |
どの機械を使い、どの資格が必要かは会社・現場で確認してください。
働き方:交替制と長期出張
job tagでは、働き方について次のように紹介されています。
勤務時間は午前8時から午後5時が一般的
温泉・地熱・石油・ガスなどの深掘ボーリング(深度500m以上)では、作業の区切りまで24時間連続作業となるケースが多く、12時間2交代制や8時間3交代制で対応することになる
500mより浅いボーリングでも、地層が不安定な場合は連続作業になる
1クルーは2名から、石油掘削の6〜7名まで規模によって異なる
繁忙期は一般に6月〜12月で、この時期は工期の関係で時間外勤務が多くなる
長期出張が多く、勤務場所が変わり野外での作業となる
ただし、すべての求人が長期出張や交替制というわけではありません。地域の調査を日帰りで回る会社もあれば、遠方の現場に長く泊まり込む会社もあります。求人ごとに確認しましょう。
安全面で確認したいこと
回転する機械:掘削中の機械の周りでの立ち位置や、作業中の服装の決まりを確認します。
重量物:ロッドや資機材の運び方、機械での吊り上げの手順を確認します。
地下埋設物・周囲の確認:掘る位置の事前確認を誰がどう行うかを聞きます。
騒音:厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドライン」(2023年改訂)に沿った対策をとっているか確認します。
熱中症:野外作業では、法令上「熱中症を生ずるおそれのある作業」に該当する場合、事業者は症状を報告する体制を整えます。あわせて、作業からの離脱・身体の冷却・必要に応じた医師の診察等の手順を定めて周知します(2025年6月1日施行)。
住み込み・出張で働く前に確認すること
ボーリング工は、寮に住みながら出張で現場を回る働き方もあります。
出張中の宿泊先:宿泊先の手配と費用は会社負担か
出張手当:手当の有無と金額
移動時間:現場間の移動時間の扱い(移動時間が労働時間に当たるかは、使用者の指揮命令下にあるかどうかで実態により判断されます)
寮費:出張で寮を空けている期間の寮費の扱い
交替制:交替制の現場での休憩・仮眠の環境
休日:繁忙期の休日の取り方
赴任時の移動費については「住み込みの赴任交通費は自己負担?前払いと立替精算の見分け方と応募前に聞くこと」()も参考にしてください。
求人票で確認するポイント
項目 | 見るところ | 確認したい理由 |
|---|---|---|
掘る目的 | 地質調査か、井戸・温泉・地熱か | 掘る深さ、現場にいる期間、勤務体制が変わるため |
担当 | 助手からか、機長候補か | 最初の仕事と教育の内容が変わるため |
勤務体制 | 日勤のみか、交替制・連続作業があるか | 生活リズムに関わるため |
出張 | 出張の頻度・期間、宿泊先、手当 | 寮と出張先の生活費に関わるため |
資格 | 入社後に取る資格と費用負担 | 機長へ進む道筋に関わるため |
運転免許 | 普通自動車運転免許の要否 | 資機材を積んで現場へ移動することがあるため |
契約形態 | 雇用契約か、請負・業務委託か | 保険や給与の扱いが変わるため |
寮 | 寮費、出張中の扱い | 手元に残るお金に関わるため |
助手から機長を目指すなら確認したいこと
job tagで紹介されている「助手→機長→現場責任者→主任技術者」の道筋を、応募先の会社で実際にたどれるかを確かめましょう。面接では次のように聞けます。
「未経験の場合、助手としてどのような作業から始めますか」
「機長になるまでに、どのような経験や資格が必要ですか。講習費用はどなたが負担しますか」
「主な仕事は地質調査ですか。井戸や温泉の掘削もありますか」(経験できる掘削の種類が、将来任される仕事の幅につながるため)
育成の道筋とあわせて、次の点も聞いておくと、助手の期間の生活を具体的に描けます。
「出張は月にどのくらいありますか。宿泊先と費用はどうなりますか」
「交替制や夜間の作業はありますか」
「出張で寮を空けている間の寮費はどうなりますか」
よくある質問
Q. 地質の知識がなくても働けますか?
job tagでは、入職にあたって特に学歴や資格は必要とされないと紹介されています。専門学校・大学の関連分野としては土木、機械、採鉱、地質などが挙げられています。知識は、助手として現場で覚えていく形になります。
Q. さく井技能士の資格がないとボーリング工になれませんか?
さく井技能士は、ボーリング工として働き始めるための法令上の必須免許ではありません。ただし、求人ごとの応募条件は異なります。
Q. ボーリング工は必ず長期出張がありますか?
すべての求人に長期出張があるわけではありません。地域の調査を中心に日帰りで回る会社もあります。出張の頻度と期間は求人ごとに確認してください。
まとめ
ボーリング工の求人は、助手として入った後、機長へどう育っていけるかという道筋から見ると、会社ごとの違いがはっきりします。
育成の道筋は、その会社が何を目的に、どのくらいの深さを掘っているかと結びついています。あわせて次のことも見えてきます。
日勤か、交替制・連続作業があるか
一つの現場にいる期間と、出張の頻度
助手から機長へ進むために必要な経験と資格
寮と出張先の生活費の扱い
ここが分からないまま入社すると、思っていたより出張が長い、交替制に体が合わない、といった食い違いが起きやすくなります。
求人票で「地質調査」「さく井」「温泉」「地熱」のどの言葉が使われているかを確かめましょう。そのうえで、助手のうちに何を覚え、いつ頃機長を任され、資格取得をどう支援してもらえるのかを面接で聞いてみてください。現場を一つずつ経験するたびに、任される範囲が広がっていく仕事です。
地面の下にある見えない情報を、最初に確かめるのがこの仕事です。

