トンネル工事の求人には、「宿舎あり」「長期」と書かれたものがあります。ただ、坑内でどんな作業をするのか、危なくないのかが分からないと、応募を決めにくいものです。
トンネル工は、山や地盤を掘り進め、崩れないように支え、最後にコンクリートで内側を仕上げるまでの作業を担う仕事です。工程ごとに専門の役割があり、法令でも作業ごとに安全の仕組みが決められています。
この記事では、山岳トンネルを中心に、次のことを整理します。
工事の進め方
掘削・支保・覆工の違い
資格と作業主任者の制度
切羽や粉じんへの対策
宿舎で働く前の確認点
トンネル工とは?工法によって現場の中身が変わる
トンネル工事には、いくつかの工法があります。
工法 | 概要 |
|---|---|
山岳トンネル工事 | 発破、機械または人力で掘削し、支保工を構築して内部空間を保ちながら建設する工事(厚生労働省の切羽ガイドラインの定義) |
シールドトンネル工事 | カッターを回転させて掘削する工事(厚生労働省の報道発表での説明) |
開削工法 | 地表から掘り下げて構造物を造り、埋め戻す方法 |
同じ「トンネル工」でも、工法によって作業の中身も使う機械も変わります。この記事では山岳トンネルを中心に説明します。求人がどの工法の現場かは、必ず確認してください。
山の中でトンネルはどうやって前へ進む?
例として次のような工程があります。実際の順序や役割分担は、会社や現場によって異なります。
山岳トンネルでは、次のサイクルを繰り返しながら少しずつ前へ進みます。
測量・位置出し:掘る位置と方向を確認します。
せん孔:発破で掘る場合、切羽(掘削の最先端)に火薬を入れる孔をあけます。
発破または機械掘削:地山を崩して掘り進めます。

ずり出し:掘った土砂や岩(ずり)を積み込み、坑外へ運び出します。

浮石落とし:掘った面に残った不安定な石を落とします。
支保:鋼製の支保工の建込み、吹付けコンクリート、ロックボルトの打込みで地山を支えます。

掘り進めた後には、防水の施工と、覆工コンクリートで内側を仕上げる工程が続きます。

掘削の前後にも、法令で決められた手順があります。労働安全衛生規則では、事業者はずい道等の掘削の前に、地山の形状・地質・地層の状態をボーリングその他適当な方法で調査し、施工計画を定めることとされています。掘削中は毎日、地質・地層、湧水、可燃性ガスなどの状態を観察して記録します。
掘削・支保・覆工は何が違う?
法令上の作業主任者の区分を見ると、工程の違いがはっきりします。
工程のまとまり | 主な作業 | 関係する作業主任者 |
|---|---|---|
掘削・支保 | ずい道等の掘削(機械掘削で労働者が切羽に近接することなく行うものを除く)、これに伴うずり積み、ずい道支保工の組立て、ロックボルトの取付け、コンクリート等の吹付け | ずい道等の掘削等作業主任者 |
覆工 | ずい道型枠支保工の組立て・移動・解体、コンクリートの打設など、ずい道等の覆工の作業 | ずい道等の覆工作業主任者 |
掘削・支保は、掘った直後の地山を崩れないように押さえる仕事です。覆工は、支保で安定させた内側をコンクリートで仕上げる仕事です。現場によっては、掘削・支保の班と覆工の班が分かれています。
誰がどの作業を担当する?
トンネルの工程は、1人がすべてを担当するものではありません。例えば次のような分担があります。
発破:発破の場合におけるせん孔・装てん・結線・点火、不発の装薬・残薬の点検・処理の業務は、発破技士免許などを持つ人でなければ就けません(就業制限)。
ずり積み・運搬の機械:ずり積機は、車両系建設機械(整地・運搬・積込み用)の例として労働局資料に挙げられています。使用する機械がこれに該当する場合、機体重量3t以上は技能講習、3t未満は特別教育が必要です。
吹付け・覆工のコンクリート:コンクリートポンプなどを使う作業があり、担当の班が分かれることがあります。
どの班に入るか、どの機械を担当するかは会社と現場によって違います。
未経験者が最初に担当する仕事
例として次のような仕事から始めることがあります。
支保工の部材、ロックボルト、吹付け材などの坑内への運搬
掘削が進むのに合わせた、換気用の風管や照明、給排水の配管を延ばす作業の補助
覆工の型枠まわりの清掃と、打設前の片付け
坑内通路の整備と、重機が後退するときの立入り管理
立入禁止の表示や、関係者以外が入らないための見張り
切羽の近くでの作業は、地山の状態を見る経験と教育が前提になります。最初にどこまで近づく作業を担当するかは、面接で聞いておきましょう。
資格・教育
トンネル工として入職するために、全員があらかじめ取得しなければならない1つの資格があるわけではありません。ただし、求人ごとに応募条件は異なり、担当する作業によっては法令で定められた教育の受講や資格が必要になります。
作業主任者
ずい道等の掘削等作業主任者、ずい道等の覆工作業主任者は、別々の制度です。
どちらも、対象の作業について事業者が技能講習の修了者の中から作業主任者を選任し、作業を指揮させる仕組みです。作業に加わる全員に必要な資格ではありません。
技能講習の受講には、実務経験などの条件が定められています。
掘削等作業主任者の職務には、2020年の法令改正で、換気の方法の決定や呼吸用保護具の選択・点検・使用状況の監視が加わりました。
その他の関係する資格・教育(担当する作業に当てはまる場合)
資格・教育 | 内容 |
|---|---|
ずい道等の内部で行う作業の特別教育 | ずい道等の掘削の作業、またはこれに伴うずり・資材の運搬、覆工のコンクリート打設等の作業で、ずい道等の内部において行われる業務が対象 |
発破技士免許など | 発破の業務(就業制限) |
車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用) | 機体重量3t以上は技能講習、3t未満は特別教育 |
型枠支保工の組立て等作業主任者 | 型枠支保工の組立てまたは解体の作業で、事業者が技能講習修了者の中から選任し、作業の指揮等をさせる(安衛令6条14号) |
職長等教育 | 新たに職長等の職務に就く人に対して、事業者が行う教育 |
安全面で確認したいこと
肌落ち・落盤
労働安全衛生規則では、落盤や肌落ち(掘削面から岩石等が落ちること)のおそれがあるときは、事業者が支保工の設置、ロックボルトの施工、浮石落としなどの措置をとることとされています。
浮石落としをしている箇所の下方などは、関係者以外の立入りが禁止されます。
厚生労働省のガイドラインでは、切羽への労働者の立入りを原則として禁止し、真に必要がある場合のみ立ち入らせることが示されています。
2024年3月の改正では、切羽(天端)から45度の範囲を「特段の配慮を必要とする範囲」とし、可能な限り立入りを避けることが加わりました。
粉じん
粉じん作業を行う坑内作業場では、空気中の粉じん濃度を半月以内ごとに1回測定し、結果に基づいて換気の強化などの措置をとることが事業者に求められています。
2020年の改正で、測定結果等に応じた有効な電動ファン付き呼吸用保護具の使用が事業者に義務付けられました。
視界・ガス・機械
排気ガスや粉じんで視界が著しく制限されるときは、換気や散水などで視界を保つ措置がとられます。
可燃性ガスの有無と状態は、掘削中の毎日の観察項目の一つです。
重機が後退して作業箇所に近づくときの誘導の方法も確認しましょう。
騒音:厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドライン」(2023年改訂)に沿った対策をとっているか確認します。
住み込み・宿舎で働く前に確認すること
トンネル工事は、一つの現場が長期にわたることがあります。現場の近くに宿舎を用意する求人もありますが、住み込みかどうかは求人によって違います。宿舎で働く場合は、次の点を具体的に確認しましょう。
工期と契約
現場の工期はいつまでか
契約期間は工期と同じか
雇用契約か、請負・業務委託か
現場が終わった後
次の現場は決まっているか
次の現場へ移るとき、宿舎も移るのか
移動の費用は誰が負担するか
宿舎の生活
宿舎費はいくらか、給与から差し引かれるか
食事は出るか、食費はいくらか
交代勤務の場合、日中に休める部屋か(個室か相部屋か)
移動・帰省
宿舎から坑口までの移動手段
帰省するときの交通費の扱い
赴任時の交通費は「住み込みの赴任交通費は自己負担?前払いと立替精算の見分け方と応募前に聞くこと」()、食事は「社員寮の食事は無料?食費・社員食堂・自炊を応募前に確認する9項目」も参考にしてください。
面接で聞いておきたい質問
「工法は山岳トンネルですか。担当は掘削・支保と覆工のどちらですか」
「未経験の場合、最初はどの作業を担当しますか。切羽にはいつ頃から近づきますか」
「現場の工期はいつまでですか。終わった後、次の現場はありますか」
「宿舎は個室ですか。宿舎費と食費はいくらですか」
「交代勤務はありますか。夜勤明けに宿舎で休めますか」
「粉じん対策の保護具は支給されますか」
「入社後に受ける特別教育や講習はありますか。費用はどなたが負担しますか」
よくある質問
Q. 暗くて狭い場所が苦手でも働けますか?
坑内は照明で作業できる明るさが確保されます。一方で、坑外とは環境が大きく違います。坑外の資材置き場などでの作業があるかは現場によって違うため、面接で確認しましょう。
Q. トンネル工は住み込みが前提ですか?
前提ではありません。現場の近くに宿舎を用意する求人もあれば、自宅から通う求人もあります。求人票の宿舎の欄を確認してください。
Q. 作業主任者の資格がないと働けませんか?
作業主任者は、事業者が技能講習の修了者から選任して作業を指揮させる仕組みです。作業に加わる全員に必要な資格ではありません。
Q. 未経験でも発破の作業に関われますか?
発破のせん孔・装てん・結線・点火などの業務は、発破技士免許などを持つ人でなければ就けません。未経験のうちは、発破の前後の片付けや資材の準備などを担当する形になります。
まとめ
トンネル工事の現場には、工事が終わる日があります。宿舎で働くなら、今の現場の工期だけでなく、その後の次の現場と宿舎まで確かめておきましょう。
工期とその後の見通しが分かれば、次のことを判断できます。
宿舎で暮らす期間と、その間に手元に残るお金
次の現場へ移るときの宿舎と移動費の扱い
契約期間と工期が合っているか
帰省の計画をどう立てるか
ここが分からないまま宿舎に入ると、工事の終わりが近づいたときに、次の仕事と住まいを急いで探すことになりかねません。
長い現場ほど、終わった後の話を最初にしておく価値があります。求人票の「工期」「契約期間」「宿舎」の欄を並べ、工期の後まで仕事と住まいの見通しを説明してくれる会社かどうかを面接で確かめてください。
山の向こうへ道が一本通じる日、その先には自分の手で掘り進めた距離が続いています。

