石工(いしく、せっこう)は、石材を切り出したり加工したりし、建物や外構に張ったり積んだりする仕事です。ひと口に石工といっても、採石場で石を切り出す仕事、墓石や石製品をつくる仕事、建物の壁や床に石を張る仕事、塀や石垣を積む仕事など、内容は大きく異なります。この記事では、まず石工の仕事の種類を整理し、そのうえで建築・外構の現場で石を張る・積む仕事を中心に、作業の流れ、似た職種との違い、未経験者の仕事、技能検定「石材施工」、応募前に確認することをまとめます。
石工の仕事は大きく4つに分かれる
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、石工の仕事として、採石場から石を切り出す「石材採石」、石垣を積む「石積み」、墓石や灯籠などをつくる「石材加工」、薄い石を敷き詰める「石張り」が挙げられています。
仕事の種類 | 主な職場 | 主な作業 |
|---|---|---|
採石 | 採石場 | 原石の切り出し、割り |
石材加工 | 加工工場、石材店 | 切断、研磨、字彫り、石製品の製作 |
石張り | 建築現場 | 建物の壁・床・柱などに板状の石材を張る |
石積み | 建築・外構・土木の現場 | 石材を積み重ねて塀、石垣、擁壁などをつくる |
job tagでは、採石の仕事は減っており、加工済みの石を組み立てたり据え付けたりする仕事が多いと紹介されています。建物の外装やエントランスへの石材の取付けや、花こう岩・大理石・大谷石などを積んで壁、柱、塀、石垣などをつくる作業も、石工の仕事に含まれます。
求人票に「石工」とあっても、墓石の据付けが中心の石材店なのか、ビルの石張りを行う工事会社なのかで、働く場所も1日の動きも変わります。応募前に、どの仕事が中心かを確認してください。
この記事では、以降、建築・外構の現場での石張り・石積みを中心に説明します。
石張り・石積みの作業の流れ
例として次のような工程があります。実際の順序や役割分担は、会社や現場によって異なります。
図面の確認・割付け:石材の寸法と配置、目地の幅を図面で確認します。
石材の確認:搬入された石材の寸法、色や柄、欠けや傷がないかを確認します。天然石は一枚ごとに表情が違うため、並べ方を検討することもあります。
墨出し:張る位置や積む高さの基準となる線を出します。
加工:現場の寸法に合わせて切断したり、端部を加工したりします。

据付け:モルタルを使って張る方法や、金物で固定する方法などで石材を取り付けます。石積みでは、下の段から高さと通りを確認しながら積み上げます。

目地の処理:石と石の間の目地を埋めて仕上げます。

清掃・確認:表面の汚れを落とし、ずれや浮きがないかを確認します。
厚生労働省の資料では、石張りの工法として、全とろ工法、帯とろ工法、乾式工法、圧着工法などが示されています。どの工法を使うかは、石材の種類、張る場所、建物の仕様によって決まります。
似た職種との違い
職種 | 主に扱う材料 | 主な作業 |
|---|---|---|
石工(本記事) | 天然石・人造石などの石材 | 石材の加工、石張り、石積み |
タイル工 | タイル | タイルの割付け・張付け |
ブロック工 | コンクリートブロックなど | ブロックの組積 |
左官 | モルタル、漆喰など | 塗り仕上げ |
造園工 | 樹木、石、土など | 庭園・外構の造成、植栽 |
張る・積むという作業はタイル工やブロック工と共通しますが、石材は一枚ごとに寸法や表情が異なり、重さもあるため、加工と据付けの技術が求められます。外構や庭の石組みでは造園工と作業が重なることもあり、どちらの会社が担当するかは現場によって異なります。
未経験者が最初に担当する仕事
job tagでは、入職後は石の扱い方や道具の名前、セメントモルタルをつくる手順などの基礎から学ぶと紹介されています。未経験者が最初に担当することが考えられる作業は次のとおりです。
石材や資材の運搬、作業場所への配置
モルタルの練り混ぜ
道具の準備と手入れ
石材を据え付けるときの補助
目地まわりや表面の清掃
石材の加工や据付けの判断は、経験を積みながら任されていきます。job tagでは、一人前になるまでに10年程度かかると紹介されています。
資格・教育
石工として入職するために、全員があらかじめ取得しなければならない1つの資格があるわけではありません。ただし、求人ごとに応募条件は異なり、担当する作業によっては法令で定められた教育の受講や資格が必要になります。
資格・教育 | 内容 | 関係する場面 |
|---|---|---|
技能検定「石材施工」 | 石材施工の技能の水準を評価する国家検定。現行の技能検定職種一覧では、石材加工作業・石張り作業・石積み作業がある。働き始めるための免許ではない | 経験を積んだあと、技能の証明として |
玉掛け(つり上げ荷重1t以上) | 技能講習 | クレーン等で石材をつる場合 |
玉掛け(つり上げ荷重1t未満) | 特別教育 | 同上 |
クレーンの運転(つり上げ荷重5t未満) | 特別教育 | 工場などでクレーンを運転する場合 |
移動式クレーンの運転(つり上げ荷重1t未満) | 特別教育 | 現場で移動式クレーンを運転する場合 |
移動式クレーンの運転(つり上げ荷重1t以上5t未満) | 小型移動式クレーン運転技能講習 | 同上 |
フォークリフト(最大荷重1t未満) | 特別教育 | 工場や置き場で石材を運ぶ場合 |
フォークリフト(最大荷重1t以上) | 技能講習 | 同上 |
研削といしの取替え等の特別教育 | 研削といしの取替え、または取替え時の試運転の業務が対象。工具を使うこと自体は対象外 | といしの取替えを行う場合 |
職長教育 | 新たに職長等の職務に就く人に対して、事業者が行う教育 | 現場で作業員を指揮する立場になる場合 |
技能検定の受検資格は、等級のほか、実務経験、学歴、職業訓練歴などによって異なります。
安全面で気をつけること
重量物の扱い:石材は重く、運搬や据付けで腰を痛めたり、手足を挟まれたりしないよう注意が必要です。何人で運ぶか、機械を使うかを事前に確認します。

切断・研磨時の粉じん:石材を切ったり削ったりすると粉じんが出ます。散水や集じん、防じんマスクなどの対策がとられているかを確認してください。
騒音・振動:切断機やはつりの工具では、騒音や振動への対策も必要になります。
高所での作業:外壁の石張りでは足場上での作業があります。高さ2m以上で墜落のおそれがある場合は、場所の状況に応じて作業床の設置や、端・開口部への囲い・手すり・覆い等の措置がとられます。
石材の転倒:立てかけた石材が倒れないよう、置き方と固定を確認します。
1日の流れ
事務所や加工場に集合し、現場へ移動する
朝礼、危険予知活動、その日の作業内容の確認
石材の搬入、モルタルの準備
石張り・石積みの作業
休憩
作業の続き、目地の処理
清掃、道具の手入れ、翌日の段取り
加工場での作業が中心の会社では、現場への移動がなく、工場内で切断や研磨を行う日もあります。
住み込みで確認すること
職場の場所:加工場が中心か、現場への出張が中心か。
雨の日の扱い:job tagでは、屋外作業が多く、雨の日は休日となることもあると紹介されています。休工日の賃金は、給与形態や就業規則・賃金規定等によって異なります。
休日:job tagでは、土日に出勤することも多いと紹介されています。休日の決め方を確認します。
会社の規模と寮:job tagでは、従業員10人未満の事業所が全体の7割を超えると紹介されています(2021年経済センサスから)。寮の形態(会社所有か、借上げか)や、同居の有無を具体的に確認してください。
入社時の移動費:寮へ入るまでの交通費の扱いは住み込みの赴任交通費で確認方法をまとめています。
求人票で確認するポイント
項目 | 見るところ | 確認したい理由 |
|---|---|---|
仕事の種類 | 採石、加工、墓石、石張り、石積み、外構のどれか | 職場も作業内容も大きく変わるため |
職場 | 加工場中心か、現場中心か | 1日の動き方と移動の量が変わるため |
扱う建物・場所 | ビル、住宅外構、公園、霊園、土木構造物など | 必要な技術や使う機械が変わるため |
機械 | クレーン、フォークリフト、切断機など | 受講が必要な教育が変わるため |
給与形態 | 月給、日給月給、日給など | 雨で休工した日の収入に関わるため |
休日 | 週休の決め方、土日の扱い | 生活のリズムに関わるため |
寮 | 寮費、個室か、職場までの距離 | 毎月の手取りと通勤の負担に関わるため |
面接で聞いておきたい質問
「石工の仕事の中で、加工、石張り、石積み、墓石の据付けのうち、どの仕事が中心ですか」
「加工場での作業と現場での作業の割合はどのくらいですか」
「入社後、最初はどの作業から担当しますか」
「クレーンや玉掛け、フォークリフトなど、業務に必要な教育は会社で受講できますか」
「石材を切断するときの粉じん対策はどのように行っていますか」
「雨の日や休工日の給与は、どのように扱われますか」
判断するときのポイント
求人の「石工」が、自分の想定する仕事(加工か、張る・積むか)と一致しているか
長く技術を身につける前提で、教育の進め方が説明されているか
雨の日や休日の扱いを含めて、住み込みの生活の見通しが立つか
よくある質問
Q. 墓石の仕事と建築の石張りは同じですか?
どちらも石工の仕事ですが、職場も作業も異なります。墓石は石材店や加工場での加工と霊園での据付けが中心で、建築の石張りは建設現場で壁や床に石材を張る仕事です。
Q. 石材施工技能士の資格がないと働けませんか?
技能検定「石材施工」は、石工として働き始めるための法令上の必須免許ではありません。ただし、求人ごとの応募条件は異なります。
Q. タイルやブロックの経験は役に立ちますか?
割付けや目地、モルタルの扱いなど共通する部分があります。一方で、石材は重さや寸法のばらつきがあるため、扱い方は新たに覚えることになります。経験の評価は会社ごとに確認してください。
まとめ
応募前に確認したいのは、次の3点です。
求人の「石工」が、加工・石張り・石積み・墓石のどれを指しているか
加工場中心か、現場中心か
雨の日や休日の扱いと給与形態
この3点が分かれば、どこで、どんな作業を、どんな生活リズムで続けるのかを判断しやすくなります。
ここが曖昧なまま入社すると、想定していた現場の仕事ではなく、加工場での作業が中心だったということが起こりえます。
判断の軸は、同じ「石工」の中で、自分が身につけたい仕事がどれかです。仕事の種類によって、覚える技術も働く場所も変わります。
今日できるのは、気になる求人の仕事内容から「加工」「張り」「積み」「墓石」のどの言葉が使われているかを確認することです。
石の仕事は、何十年も残る構造物をつくる仕事です。求人票の言葉を一つ確かめることから、自分に合う入り口を見つけてください。

